セッション情報 特別講演(消化器内視鏡学会)

画像強調観察-現状と今後の展望-

タイトル 特別講演2:

画像強調観察-現状と今後の展望―

演者 田尻 久雄(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科)
共同演者
抄録 わが国における消化器内視鏡の歴史は,1950年代に開発された胃カメラの臨床応用に始まり,その後,ファイバースコープ,電子スコープと10~20年の周期で新しい機器の開発とともに,内視鏡診断・治療学も進展を遂げてきた.電子スコープが開発されて約30年経過しているが,電子スコープは光の信号を直接見るファイバースコープと異なり,半導体素子を通して電子信号として画像が得られるので,電子的に種々の画像処理,画像解析が可能である.生体の特性は観察する波長により,その吸収特性や散乱特性の違いから,得られる情報が大きく異なる.この特性に着目し,より自然な観察画像から目的に応じた観察波長を用いた新たな内視鏡システムが臨床応用され,その結果,新規性の高い診断法と診断理論が展開されている.とくに近年のエポックは,画像強調観察(IEE;Image Enhanced Endoscopy)の先駆けとなったNarrow Band Imaging(NBI)の開発である.NBIを使った粘膜表面の微細血管観察に基づく精緻な診断学は,従来の内視鏡診断学を飛躍的に発展させる契機となり,世界中のがん研究者に影響を与えることとなった. 2012年になり,富士フィルム社からレーザー光を用いたBlue Laser Imaging(BLI)が登場した.同年秋にはオリンパスメデイカルシステムズからEVIS LUCERA ELITEが登場し,白色光やNBIおよびAFI観察時の画質と明るさが著しく向上し,IEEは新しい局面を迎えている.このシステムでは,Dual Focus機能など新たな機能も加わって,消化器センター病院からクリニックまで現場の内視鏡診療において,IEEをより広く普及させると推測している.同時にIEEによる診断学が世界的な標準化に向けて加速していくものと期待している.また,慢性胃炎に対するH.pylori感染症の除菌療法が保険診療で承認されるとともに内視鏡による検診システムが推奨され,極細径(経鼻)内視鏡の需要も増していくと考えられる.これまで課題とされた明るさや画質などが飛躍的に改善され,スクリーニングから精査まで幅広い内視鏡診断で使用できるものとなっている. 高解像度の内視鏡やIEE拡大内視鏡の普及により,組織の異型度を推察することが可能となってきており,治療前検査の段階で“内視鏡的病理学”とも呼ぶ時代が到来しつつある.さらに,Endocytoscopy,Confocal EndomicroscopyなどのMicroscopic Endoscopy(顕微内視鏡)による細胞レベルの診断が実用化され,不必要な生検を減少させ,内視鏡診断と治療が同時に行うことが可能な時代になると予測される.内視鏡の歴史を振り返ると,診断と治療の開発・普及は常にパラレルに行われてきている.内視鏡医療分野は,日本の内視鏡医と技術者とが連携して,IEEや拡大内視鏡などの診断技術や各種治療機器・処置具を開発し,発展させてきた.われわれ日本の内視鏡医は,これまで先人の努力の積み重ねで構築してきた確固たる診断学に加えて,止血術,ポリペクトミー,EMR,ESDなどで培ってきた技術を応用し,質の高い臨床的研究を前向き多施設共同研究で行い,内視鏡診断・治療の分野で国際的にさらなる貢献を果たしていくことが使命である.
索引用語