セッション情報 |
特別講演(消化器内視鏡学会)
消化器内視鏡における新しい診断・治療法の開発とその喜び
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タイトル |
特別講演4:消化器内視鏡における新しい診断・治療法の開発とその喜び
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演者 |
井上 晴洋(昭和大横浜市北部病院・消化器センター) |
共同演者 |
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抄録 |
このたびは,第86回日本消化器内視鏡学会総会会長の藤田直孝先生より,上記の講演タイトルをいただき,また「総論的でも構わないので,若い先生方を鼓舞するような講演をおこなうように」との指示をいただきました.また司会の北野正剛先生(日本消化器内視鏡外科学会理事長,世界内視鏡外科学会理事長)を前にして,わたしの内視鏡医としての経歴をお話しするのは恐れ多いのですが,会長のご指示ですので恐縮ですが,お話をさせていただきます.また,あくまで私見による見解であることを了解ください.まずは,新しい「診断」の方から話をさせていただきます.1995年当時,IPCL(扁平上皮乳頭内血管ループ)の発見は,「内視鏡観察時に病巣をもっとよく見たい」という思いから拡大観察を行った結果でありました.また食道癌における変化(IPCLパターン分類:1999年)に到達してからは,次は「生体内で癌細胞を直接見たい」というテーマを掲げて,産学共同研究に取り組みました.Endocytoscopyは,大植,熊谷,両先生との共同研究の結果登場しました(2004年).2006年のECA(Endocytoscopic atypia)分類の発表につながりました.さらに2008年にはCM2重染色(Crystal violet & Methelene blue double staining)を開発しました.今後,Endoscopic pathologyとして,内視鏡診断学の中心になると確信しております.「治療」ですが,食道静脈瘤出血に対する治療の経験からはじまりました.北野教授にはこの時から北野式硬化療法チューブ(ST-E1)の使用など種々,ご指導いただきました.食道における粘膜切除術の方法として,EMRTを報告(1990年),さらに簡便に行えるキャップ法(EMRC法)を1992年に発表しました.そして時代は小野裕之先生にはじまるESDの時代に突入しました.ESDは治療内視鏡を内視鏡外科手術のレベルに押し挙げたと言えましょう.このESDのテクニックと外科の腹腔鏡下Heller手術の臨床経験を背景として,POEM(2008年)が開発されました.POEMは,北野教授が先導されたNOTESの有力な方法の1つであります.これまでに北部病院で380例に施行しており,良好な成績を保っており,先進医療の指定もいただきました.また,POEMの延長として内視鏡的粘膜下腫瘍核出術(SET)(2010年)を発表しました.さらに全層切除の方法として,CLEAN-NET(非露出法)(2011年)を発表してまいりました.一方,内視鏡外科手術の領域においては,食道癌に対する鏡視下手術として,腹臥位での胸腔鏡手術を導入して,ロープウェイテクニック(両側反回神経へのテーピング)による縦隔リンパ節の徹底廓清(2010年)を施行しています.POEMにつきましては,海外20か国以上において各国の第一例を行い,現在では世界的に約2000症例以上に施行されております.そのなかには米国でのライブ(Johns Hopkins大学,New York Cornell大学,Chicago大学,Los Angeles Cidas Sinai病院,Houston Medical Centerなど)も経験させていただきました.日本の医師免許であっても,手続きを踏めば,米国での臨床ライブが可能でありました.私の内視鏡治療の出発点は,食道静脈瘤の出血であり,そこから逃げずに正対して全力で医療にあたるように心がけております.日常臨床で行き詰まっていることを解決することに尽きると思っております. |
索引用語 |
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