セッション情報 教育講演2(JDDW)

「消化器癌のサーベイランス」胆道癌の診断と治療

タイトル 教育講演2:

胆道癌の診断と治療

演者 海野 倫明(東北大大学院・消化器外科学)
共同演者
抄録 胆道癌は日本において年間死亡者数は約17000人(第6位)に位置する,決して稀ではない癌腫である.胆管癌・胆嚢癌・十二指腸乳頭部癌がいわゆる狭義の胆道癌であるが,肝内胆管上皮から発生した肝内胆管癌は,取り扱い規約上,肝癌に含まれるが,その由来を考えると広義の胆道癌に含まれるべき癌である.これら胆道癌の治療成績は医学・医療が進歩した現在においてもいまだ不良であり満足すべきものではない.その原因は多岐にわたるが,第一に診断に関する因子が挙げられる.胆道癌の早期診断はいまだ困難であり,黄疸や腹痛などの有症状症例が大部分を占める.高リスク群の絞り込みもいまだ十分ではなく,遺伝要因や環境要因の解析が待たれている.MD-CTやMRI, EUSなどの高細度画像診断機器の発展により局在診断や質的診断の進歩が見られるが,微小な早期癌を発見することは不可能である.また早期診断のためのバイオマーカー研究がなされいくつかの候補が示されているが,いまだに研究段階であり臨床応用にはまだまだ時間がかかるものと思われる.一方,治療に関しても多くの問題が山積している.外科治療の向上により肝門部胆管癌に対する尾状葉併施半肝切除や下部胆管癌・十二指腸乳頭部癌に対する膵頭十二指腸切除などの治療法が確立し,治癒切除率の向上,術後合併症の軽減が図られてきている.診断学の進歩と合わさって,極めて不良であった以前の治療成績は21世紀に入り急速に向上し,5年生存率は40-50%に達するようになった.しかしながら胆道癌の治療は未だに大きな課題を背負っている.第一に切除不能であった胆道癌の予後は極めて不良で,現時点で最も有効であるGemcitabine+CDDP(GC療法)による化学療法を施行しても平均生存期間は1年以内である.より優れた抗癌剤や分子標的治療薬の開発が待たれるところである.第二に,進行癌は治癒切除が行われたとしても多くの症例が再発する.特にリンパ節転移を有している症例は予後不良であり,リンパ行性転移や血行性転移に対する治療戦略確立は急務である.現在,Gemcitabineを軸とする術後補助化学療法の臨床研究が遂行中でありその結果が待たれる.一方,予後不良因子を有する症例,例えばリンパ節転移が高度であるもの,切除断端陽性となる可能性が高いもの,高度な脈管浸潤を有している症例などを,"not optimally resectable"と定義することができよう.これら症例に対しての術前化学(放射線)治療などが検討されており結果が期待される.切除不能症例に対してもGC療法を凌駕する抗癌剤の組み合わせや放射線治療の上乗せ効果の有無,分子標的治療薬の研究開発など,多くの課題が山積している.さらには,発生部位や環境要因,遺伝子変異の有無,バイオマーカー発現等による胆道癌のcharacterizationが行われるべきで,これら科学的因子に基づく個別化治療が望まれている.
索引用語