セッション情報 教育講演4(JDDW)

「消化器癌のサーベイランス」食道扁平上皮癌のサーベイランス

タイトル 教育講演4:

食道扁平上皮癌のサーベイランス

演者 有馬 美和子(埼玉県立がんセンター・消化器内科)
共同演者
抄録  食道癌のサーベイランス,特に食道表在癌のサーベイランスには内視鏡検査が不可欠である.ヨード染色とNBIやFICE,Blue LASER imaging (BLI)などの画像強調法併用拡大内視鏡が診断精度の向上に寄与している.食道癌のハイリスクグループおよび,診断経緯,画像強調法併用拡大内視鏡による食道癌のサーベイランスの方法と成績について報告する.1)食道癌サーベイランスにおけるリスク因子:食道扁平上皮癌のリスク因子は,55歳以上の男性,大酒家,ヘビースモーカー,野菜・果物の摂取不足,食道・頭頸部癌の家族歴などが挙げられ,リスク因子が重なるほどリスクが高くなる.飲酒家のなかでもアルデヒド脱水素酵素2 (ALDH2)のヘテロ欠損とアルコール脱水素酵素1B (ADH1B)のホモ低活性型のリスクは高く,現在または飲み始めた1~2年にコップ1杯のビールで顔が赤くなる体質かどうかが目安になり,赤血球のMCV増大がマーカーとなる.内視鏡所見のマーカーとしては,口蓋や咽頭・食道のメラノーシス,多発ヨード不染が拡がるまだら不染食道があり,これらのサインがある症例は頭頸部癌および,多発食道癌のリスクが高い.2)食道表在癌の発見経緯:食道表在癌の発見には内視鏡検査が必要であることは周知の事実である.2010年1月~2012年12月に当院で内視鏡治療を施行した表在癌178例でも,177例(99.4%)が内視鏡検査で発見されていた.また,検査を受けるきっかけとなった症状を有した16例中,食道癌が原因と考えられる前胸部違和感や熱い物がしみるなどの症状を示したのは4例(2.2%)に過ぎなかった.150例(84.3%)は症状がないものの,人間ドックや定期的な健康診断,集団検診の内視鏡検査で発見されていた.3)頭頸部癌患者の上部消化管スクリーニング内視鏡検査における食道癌サーベイランス:NBIなどの画像強調法を併用すると,早期食道癌の多くはbrownish areaとなって視認しやすくなるが,これらは通常観察でも十分拾い上げが可能な病変であることが多い.血管変化の乏しい上皮内癌や白色調の病変もあるため白色光観察も重要であり,接線方向になって観察しにくい部位もあるので初回検査時にはヨード染色も併用することが勧められる.頭頸部癌初診患者の初回スクリーニング内視鏡検査における,食道表在癌の拾い上げ診断能を検討した.往路は通常光観察し,復路でNBI/FICE/BLI観察したのち,ヨード染色を行い,2009年12月~2013年3月に検査を施行した353例中43例(12.2%)に食道癌が発見された.通常光観察で発見された症例が37例(86.1%),NBIが1例,ヨード染色が6例であった.使用機種ではGIF-H260Zを用いた176例中19例(10.8%),EG-590ZWが75例中9例(12.0%),EG-L590ZWが102例中15例(14.7%)の発見率であった.4)食道表在癌内視鏡治療後の多発病変のサーベイランス:食道表在癌内視鏡治療後のfollow up内視鏡は,基本的に6ヶ月ごとに行っている.画像強調法併用拡大内視鏡を用いた内視鏡検査で,異時性多発癌の発見頻度,発見したmodality,症例の特徴を検討した.2006年1月~2012年10月に内視鏡治療を施行した280例中,多発癌は33例48病巣(11.8%)に認められた.このうち通常光観察で発見したものが37病巣(77%),BLIが2病巣,ヨード染色が9病巣であった.33例中25例(76%)は背景粘膜がヨード染色で高度なまだら不染を示し,そのうちの15例が頭頸部癌合併例であった.食道癌の早期発見には高解像度の内視鏡を使用することが勧められるが,病変の拾い上げには使用している機種に応じた画像強調法の活用が有効と考える.
索引用語