セッション情報 教育講演6(JDDW)

「消化器癌のサーベイランス」大腸

タイトル 教育講演6:

大腸

演者 斎藤 豊(国立がん研究センター中央病院・内視鏡科)
共同演者
抄録  【大腸癌の発育進展】大腸癌の発育進展には,以前よりポリープ癌化説が支持され大腸癌における早期診断・治療の中心的役割を担ってきた.一方,工藤らの診断努力により陥凹型早期大腸癌が稀ならず存在することが明らかとなっている.【多施設前向き無作為化比較試験-Japan Polyp Study (JPS)】陥凹型腫瘍の頻度も異なり,内視鏡観察の精度も異なる欧米の知見をそのまま日本に当てはめることには異論があり,日本における多施設共同無作為化比較試験が計画され,すでにRCT後の経過観察を終了した.【多施設における遡及的検討-JPSレトロ】JPSを開始するに際し,6施設おける遡及的検討を行った.Index Lesion;IL(0mm以上の上皮性腫瘍,癌腫)の推定発生率は,A(Pure-NAD )+B(5mm以下腺腫のみ)群;(5%)<C(6mm以上の腺腫切除)+D群(M癌);(13%)と後者が有意に高率であった(p<0.0001.ILの発生率5%以内を許容範囲とした場合の適正な検査間隔は,A群は10年を超えるもののB群では6年,C・D群で3年という結果であった.【ESDとEMRの治療成績】2003年1月から2006年12月までに当院で20mm以上の大腸腺腫・早期癌に対して内視鏡治療を行った553病変中,病理学的に大腸癌治療ガイドラインの治癒切除基準を満たし,6ヶ月以上の経過観察が可能であった373病変(EMR:228病変,ESD:145病変)を対象とし,治療法別の遺残再発率,偶発症,治療時間を検討した.EMR群,ESD群における一括切除率は33% vs. 84%であり,ESD 群で有意に高く,その結果,遺残・再発率はEMR群では14% とESD群の2%より有意に高かった(平均観察期間13.4±7.9, range:6‐40).内視鏡での追加治療で94%は対処可能であったが,1例は浸潤癌として再発し,外科手術を要した.偶発症の観点からは,穿孔をEMR群,ESD群でそれぞれ0.9%,6.2%に,また,後出血をEMR群3.1%,ESD群1.4%に認めた.治療時間はそれぞれ平均29分・108分とESD群では約3倍の時間を要した.【大腸SM癌内視鏡治療後のFollow-up】大腸pSM癌の長期成績(多施設・retrospective)からガイドライン治療の妥当性を検討した.783例のうち経過観察可能症例は123例で,長期成績は再発2例(1.6%),死亡4例(原病死1例),5年無再発生存 93%,5年全生存 97%であった.追加治療が考慮された症例のうち,追加治療非施行群102例と施行群197例において,再発率はそれぞれ5.8% vs 2.5%,5年無再発生存90% vs. 97%と,統計学的有意差はないものの追加手術施行群に良好な傾向にあり,外科手術の意義が示唆された.長期成績の観点からは,ガイドラインに即した治療法選択は妥当であると考えられたが,実臨床においては,経過観察可能群においても再発riskを念頭におく必要性がある.【おわりに】大腸がんの診断・治療・サーベイランスについて述べたが,大腸がんは早期発見・治療することで高率に治癒が期待できる疾患であり,早期発見・診断法の確立と内視鏡的治療法の開発・普及に加え,大腸がん検診の国民への啓蒙が重要である.
索引用語