セッション情報 消化器外科学会特別企画1(消化器外科学会)

消化器外科学会特別企画 「胃癌診療 国内外のUp to date」

タイトル (講演)外企1-2:

胃癌診療 国内外のUp to date(内科)

演者 室 圭(愛知県がんセンター中央病院・薬物療法部)
共同演者
抄録  【殺細胞薬剤の現況と展開】胃癌における一次化学療法は,国際的にはフッ化ピリミジン系抗癌剤+プラチナ系薬剤の併用療法が広く受け入れられ,欧米では3剤併用療法も標準的治療として認知されている.わが国ではSPIRITS試験の結果を受けて,S-1+CDDP療法が標準的治療として認識されるようになり,最も推奨されるレジメンとして胃癌治療ガイドラインにも明記されている.その他,胃癌で有効な抗癌剤はタキサン系,CPT-11であり,わが国ではこれらは二次,三次化学療法として使用されることが多い.国外においても,無治療群(BSC)をコントロールアームにおいた化学療法群との比較試験(ドイツのAIO試験: Eur J Cancer 47: 2306-2314, 2011,韓国の試験; Kang JH et al. J Clin Oncol 30: 1513-1518, 2012,英国のCougar-2試験; Ford H, et al. ASCO-GI 2013 #LBA4)が行われ,いずれも全生存期間は化学療法群が有意に良好な結果が得られ,二次化学療法は行うべきであるという位置づけが確認されたと考える.わが国ではWJOG4007試験の結果から,weekly paclitaxelがわが国における二次化学療法のコントロールアームとしての地位を獲得した.実臨床の現場では,適切な患者選択を行った上でS-1+CDDP療法を主軸とした一次化学療法を実践し,治療変更のタイミングを失することなく適正な副作用マネジメントを施しながらweekly paclitaxelやCPT-11を二次,三次治療へと逐次的に行っていくことが望ましいと考える.今後の展開として,G-SOX試験(Higuchi K, et al. ASCO GI 2013 #60)の結果より,シスプラチンをオキサリプラチンに変えた治療レジメンも期待される. 【分子標的治療薬の現況と展開】近年,肺癌,乳癌,大腸癌領域では数多くの分子標的治療薬が臨床導入され,治療成績向上に寄与している.胃癌でも抗HER2抗体であるトラスツズマブの併用化学療法がHER2陽性胃癌に対する標準治療として確立した(ToGA試験)が,抗VEGF抗体薬であるベバシズマブを用いたAVAGAST試験では全生存期間の上乗せ効果は検証されなかった.この国際共同試験では,地域別の治療成績相違の問題も浮き彫りになった.その他,angiogenesisに関与する低分子化合物(sunitinib, sorafenib, cediranibなど)を用いた早期臨床試験では,ことごとく毒性が顕著で有効性を示せなかった.さらに,everolimus (GRANITE-1)や抗EGFR抗体薬であるcetuximab (EXPAND), panitumumab (REAL-3)を用いた国際共同試験はいずれもnegativeな結果となり,胃癌における今後の分子標的治療薬の展開は厳しいと言わざるを得ない.最近では唯一,二次治療において,無治療群(BSC)との比較で抗VEGFR2抗体薬であるramucirumabがpositiveな結果が得られた(Regard試験; Fuchs C, et al.:ASCO-GI 2013, LBA #5)が,わが国は本試験に参加しておらず,また,本薬剤においても現時点で患者をselectionする有用なバイオマーカーは認められていない. 【まとめ】今まで行われてきた国際共同試験の結果,胃癌の分子標的治療薬の開発の困難性が明らかとなり,また,わが国の胃癌治療の成績の良さと特殊性が浮き彫りになった.果たして胃癌に有望な分子マーカーは存在しないのか,存在するとしたら現時点で何が有望なのか,そして,わが国では,どのように胃癌の治療開発を行い,実地臨床の現場では既存の薬剤をどのように使っていくべきか,等について解説する.
索引用語