セッション情報 消化器外科学会特別企画2(消化器外科学会)

消化器外科学会特別企画 「肝癌診療 国内外のUp to date」

タイトル (講演)外企2-2:

肝癌診療 国内外のUp to date(内科)

演者 上嶋 一臣(近畿大・消化器内科)
共同演者
抄録  肝細胞癌治療においては,ウイルス性肝炎,肝硬変をベースに発癌するという肝細胞癌特有の背景から,肝局所に対する治療方法が開発,発展してきた.特にEarly stageにおいては,肝切除およびラジオ波焼灼療法の確立により,肝細胞癌患者の生命予後が飛躍的に改善している.しかし,再発予防法については確立されておらず,Unmet needsとなっている.これを解決すべく,現在,分子標的薬を用いた再発予防効果を検証する治験が進行している.Intermediate stageに対しては主にTACEが選択される.日本人ならではの緻密な治療により治療効果は向上しているが,根治療法ではないため,再発,増悪が必至である.これに対しては分子標的薬を用いたTACE後補助化学療法の臨床試験や治験が行われている.特にソラフェニブを用いたTACTICS trialは,本邦の臨床現場に即したtrialであり,その結果が期待されている.Advanced stage,特に高度脈管浸潤を伴う局所進行例では肝動注化学療法が選択される.本療法は局所制御効果に優れており,奏効すれば長期予後も得られることが経験的に分かっているが,survival benefitが証明されていないため,海外にはなかなか認知されていないという問題がある.この問題を解決するため,SILIUS trialが行われている.これは,ソラフェニブと動注化学療法(Low-dose FP)の併用療法の有効性を検証するランダム化比較第III相試験であり,ソラフェニブによる生存期間延長と,Low-dose FPによる腫瘍縮小効果の相加効果が期待されている.この臨床試験によりsurvival benefitを証明することが可能である.一方,遠隔転移例,TACE不応例,脈管浸潤例に対しては,ソラフェニブが用いられるようになった.これにより標準治療が施行困難な患者に対する治療の選択肢が広がった.しかし,ソラフェニブ不応,不耐例の克服という新たな問題が出てきている.これに対する解決策としてセカンドラインとしてさまざまな分子標的薬の開発が進んでいる.またソラフェニブに代わる新たなファーストラインの分子標的薬の開発が進んでいる.このように肝細胞癌治療においては,まだまだ解決しなければならない大きな問題が山積している.今回,国内外の臨床試験,治験をはじめ肝細胞癌治療に対する取り組みを紹介させていただき,肝細胞癌治療を取り巻くさまざまな問題点が共有できるような発表としたい.
索引用語