抄録 |
大腸癌肝転移症例では,R0切除後に30-40%の治癒率が得られ,resectableまたはborderline resectable肝転移症例に対しては,治癒が目標である.現在,1)周術期補助化学療法による治療成績の向上,2) conversionに最適な化学療法が課題である.大腸癌肝転移切除の周術期補助化学療法については,5-FU単独やFOLFIRI,肝動注などによる多少の上乗せが示されているが,いずれも有意なものではない.欧米でのガイドラインに記載されているFOLFOX療法による術前後を含めた周術期補助化学療法についても,無病生存期間の延長を示したが,生存期間における有意な上乗せを示すことができなかった.現在,本邦では肝転移切除単独vs術後FOLFOX療法の比較試験(JCOG0603)が行われており,欧米では分子標的薬を含めた比較試験が展開されている.化学療法後のconversionについては,腫瘍縮小によるものと腫瘍消失によるものがあるが,画像上消失したと思わる病変にも組織学的には癌細胞が遺残している可能性が低くない.腫瘍縮小効果が重要であり,5-FU, irinotecan, oxaliplatinの3剤を併用したFOLFOXIRI療法がFOLFIRI療法よりも奏効率およびR0切除率が高かった.また,K-ras野生型の症例では抗EGFR抗体薬との併用により奏効割合およびR0切除率が向上する.一方,抗VEGF薬ではFOLFIRIとの併用で奏効率の向上が認められるが,FOLFOX/XELOXとの併用では奏効率の向上がないとの報告もあり,一致した見解が得られていない.Stage IIIの術後補助化学療法において分子標的薬の上乗せ効果はなく,分子標的薬を用いた化学療法によるconversion切除後の術後補助化学療法についての見解も一定していない.いずれにしても,術前and/or術後の合計化学療法6ヶ月と切除可能な時に切除する治療略が基本であり,外科・内科の緊密な連携が重要である.切除不能肝転移症例に対する化学療法は,他の転位性大腸癌と同じ治療戦略がとられるが,分子標的薬の位置づけが重要であり,最近様々な臨床試験の結果が報告されている.さらには,新薬も開発されており,現在は1-4次治療までを考慮した治療戦略がとられるようになってきた. |