セッション情報 消化器外科学会特別企画5(消化器外科学会)

消化器外科学会特別企画 「胆道癌診療 国内外のUp to date」

タイトル (講演)外企5-1:

胆道癌診療 国内外のUp to date(外科:胆管癌外科治療:国内外のUp to date)

演者 江畑 智希(名古屋大大学院・腫瘍外科学)
共同演者
抄録 肝門部領域の胆管癌は胆管癌の中で最多を占めるが,この腫瘍に対する外科切除の歴史は50年程度しかない.このため,遺残のない切除(R0切除)の重要性は認識されているが,そこに至る具体的な手術適応や術式は各施設が独自に定めているのが現状である.本稿では今まで胆道外科医が工夫してきた切除率またはR0率向上のカギとなる外科治療を概説する.1) 肝右三区域切除:門脈臍部左縁での胆管を切離するため,左門脈臍部の幅の分だけ肝右葉切除よりも胆管長が確保できる.この特徴から厳密にはBismuth IV型に対して適応となる.最大肝切除となるため肝予備能に特別の配慮が必要である.2) 肝左三区域切除:右門脈前枝の右側で胆管を切離するため,右門脈前枝の幅の分だけ肝左葉切除よりも胆管長が確保できる.本肝切除もBismuth IV型に対して適応がある.肝切除量は肝右葉切除相当であるので,肝予備能に特別な配慮は不要である.本邦での施行頻度は2%程度であり,施行頻度増加が望まれる術式である.3) 血管合併切除:門脈切除・再建は技術的に容易であるため一般的な手技となっている.右側肝切除限定の予防的門脈切除に関しては議論の余地がある.一方,肝動脈切除・再建は試みられつつあるが,技術的問題のため一般化することはないと予想される.特に,局所進行症例に対する肝動脈と門脈の同時切除再建はいまだcontroversialである.4) 肝切除兼膵頭十二指腸切除:広範囲胆管癌に対する唯一の根治切除術式である.門脈塞栓術導入以前には高い合併症と死亡率が報告されたが,現在では安全性と長期予後を再評価すべき術式である.  これらを用いた切除により概ね30%前後の5年生存率が期待される.しかし,約半数を占めるリンパ節転移例に対する切除単独の限界も明らかであり,有効な術後の補助療法の確立が望まれる.
索引用語