セッション情報 消化器外科学会特別企画5(消化器外科学会)

消化器外科学会特別企画 「胆道癌診療 国内外のUp to date」

タイトル (講演)外企5-2:

胆道癌診療 国内外のUp to date(内科:胆道癌診療 国内外のUp to date:内科から)

演者 古瀬 純司(杏林大・腫瘍内科学)
共同演者
抄録 わが国の胆道癌による死亡数は年間16,000名を超え,世界でも飛びぬけて多い数である.現在,切除手術が唯一胆道癌に対する根治治療であるが,切除不能例も多く,また切除後の再発も高率である.胆道癌患者の予後改善には化学療法の進歩が必須であり,この数年臨床試験に基づくエビデンスが確立してきた.現在,さらに新たな治療開発が進んでいる.2000年以降,わが国ではゲムシタビン(GEM)とS-1による臨床試験(治験)が行われ,2006年と2007年,それぞれ胆道癌に対する保険適用が承認されたものの,大規模な第3相試験に基づいた標準治療とは言えなかった.2009年,英国で行われたGEM単独とGEM+cisplatin併用(GC療法)の第3相試験(ABC-02試験)の結果が報告され,GC療法群で有意な生存期間の延長が確認された.わが国でもABC-02試験と同レジメンで比較試験(BT-22試験)が行われ,ほぼ同様の結果が得られた.これらの試験のメタアナリシスでは493例が解析され,GC療法のGEM単独に対するハザード比が0.64 (95%-CI: 0.53-0.76), p<0.001とGC療法の良好な治療成績が確認された.現在,GC療法が切除不能胆道癌の標準治療として国際的にも認知されている.一方,GEM+S-1併用療法(GS療法)に対する期待も大きく,S-1単独とGS療法によるランダム化第2相試験(JCOG0805)が行われ,1年生存割合からGS療法の有効性が示唆された.現在,GC療法とGS療法の第3相試験がJCOG試験として計画されている.このように現在,切除不能胆道癌ではGEMベースの1次治療が確立したことから,次の課題として,2次治療および術後補助療法の確立が挙げられる.2次治療としては,GEM+オキサリプラチンや分子標的薬単剤での試みが進められている.術後補助療法ではこれまで大規模な臨床試験は行われておらず,質の高い試験による証明が必要であり,JCOGでのS-1を用いた第3相試験が計画されている.胆道癌は国際的にみて日本で多い疾患であり,手術や化学療法を始め,多くの経験が蓄積されている.日本から新たなエビデンスを発信していく必要がある.
索引用語