セッション情報 消化器がん検診学会特別企画1(消化器がん検診学会)

消化器がん検診学会特別企画 「検診における大腸3D-CT(仮想内視鏡)はどこまで来たか -エビデンスの観点から概観する-」

タイトル (講演)検企1:

検診における大腸3D-CT(仮想内視鏡)はどこまで来たか -エビデンスの観点から概観する-

演者 永田 浩一(亀田京橋クリニック)
共同演者
抄録 日本の大腸内視鏡技術は世界最高レベルである.その一方で,日本の大腸がん罹患数は増加し,死亡数は45,744人(2011年,厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態統計」)に達しており,大腸がんの年齢調整死亡率は高止まりしている.さらに,日本の大腸がんの年齢調整死亡率は欧米諸国と比較しても高いレベルにある(WHO統計).大腸がんが減らない主要な原因は,3割にも満たない検診受診率の低さや5割台で低迷している精検受診率などが考えられる.世界有数の内視鏡技術を有する日本で大腸がん死亡率が高い,あるいは欧米諸国に比べて死亡率減少の度合いが鈍い我が国の現状は,ガラパゴスシンドロームになぞらえることができる.ガラパゴスシンドロームとは,日本の薄型テレビや携帯電話などの電化製品が高い技術をもっているのにも関わらず,独自の方向で多機能・高機能化したため現場のニーズと乖離し,世界のマーケットから大きく出遅れてしまった現象のことである.大腸がんを巡る日本の状況は,このガラパゴスシンドロームに通じるところがある.欧米や韓国では高い内視鏡技術はなくとも,検診受診率を上げること,そして使うことのできるモダリティを柔軟に活用しそれらを現場まで届けるよう努めたため,大腸がん罹患率・死亡率低下を実現してきた.一方で,日本は大腸がん罹患率・死亡率減少への取り組みからみると,欧米諸国に比べてまだ出遅れている感があるのは否めない.この状況を打破するために,国民への普及啓蒙や積極的な受診勧奨,さらには大腸内視鏡検査を補完し受診率向上に貢献する検査法の導入などを検討する必要がある.2008年に,米国がん協会は大腸がん検診ガイドラインを改訂し,大腸3D-CTを内視鏡と並ぶ有効な大腸がん検診法として初めて掲載した.大規模な臨床試験による精度検証の実施・エビデスンスの確立が,大腸3D-CTの普及を後押ししたのである.一方,日本では大腸3D-CT検診の有用性を明確に示すエビデンスを出すには程遠い状況にあったが,近年になり日本でもエビデンスの確立を目指すべく,2つの大規模多施設共同臨床試験「大腸3D-CT検査と大腸内視鏡検査による大腸腫瘍検出能の精度比較に関する検討(ClinicalTrials.gov試験ID; NCT997802, UMIN試験ID; UMIN2097)」,および「低用量PEG-CM法を用いた大腸3D-CTの検査精度に関する多施設共同試験 (UMIN6665)」が相次いで実施された.日本の大腸がんを巡る厳しい状況を変えるための一つの取り組みとして,新しい検査法である大腸3D-CTの積極的な活用を検討してみることも大切である.日本の臨床試験の結果をもとに,大腸3D-CTが大腸がんの精密検査あるいは任意型検診として,内視鏡を補完できるかその可能性について言及したい.
索引用語