セッション情報 消化器病学会特別企画1(消化器病学会)

GRADEシステムに準じて作成された新ガイドライン最終報告

タイトル 消企1-基調講演2:

GRADEシステムによる新ガイドライン作成と今後の課題

演者 森實 敏夫(日本医療機能評価機構)
共同演者
抄録 診療ガイドライン開発システムとしてGRADE systemが2004年に発表され,以降同システムを採用して作成された診療ガイドラインが次第に増加してきている.日本消化器病学会でもGRADE systemに準じて診療ガイドライン作成を行うことが決定された.GRADEは任意に形成されたGRADE working groupが提案したもので,その方法論に関する論文が多数発表されており,現時点でも発展中のシステムである.一方で,米国Institute of Medicine (IOM),英国National Institute of Health and Care Excellence (NICE)なども現在までの診療ガイドライン作成の方法論をまとめた結果,GRADEと類似した方法論に到達している.IOMは診療ガイドラインを「患者のケアを最適化する目的でエビデンスのシステマティックレビューとケアの異なる選択肢の益と害の評価に裏付けられた推奨を含む声明集」と定義しており,システマティックレビューに基づくエビデンス総体の強さの評価,益と害の大きさの評価が重要視されている.さらに,患者の価値観や好み,負担,費用の評価を行った上で推奨の強さが決定される.臨床的文脈のなかで臨床課題を明らかにし,そこからクリニカルクエスチョンを作成し,クリニカルクエスチョンごとに益のアウトカムと害のアウトカムを設定して,エビデンス収集,バイアスリスク,非一貫性,不精確,非直接性,報告バイアスなどの評価,定性的および定量的システマティックレビュー(メタアナリシス)によるエビデンス総体の評価という作業が必要となる.これらの作業に必要な知識・スキルの普及が今後必要であるが,IOMが提案しているような診療ガイドライン作成委員会とシステマティックレビューを担当するグループを別にする方法も今後考慮する必要がある.診療ガイドライン作成方法論そのものについても,Efficacy のみならずEffectivenessの評価法,診断法のシステマティックレビュー,国際的にも方法論が確立していない益と害の評価法が今後の課題である.さらに,患者の視点を反映させるための患者参加のあり方,利益相反の管理,診療ガイドライン活用促進策なども今後の課題である.
索引用語 GRADE system, 診療ガイドライン