セッション情報 消化器病学会特別企画1(消化器病学会)

GRADEシステムに準じて作成された新ガイドライン最終報告

タイトル 消企1-3指:

過敏性腸症候群診断治療ガイドライン

演者 福土 審(東北大大学院・行動医学DELIMITER東北大病院・心療内科)
共同演者
抄録 過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome; IBS)の研究は国際的に長足の進歩を遂げ,新薬の開発も盛んである.日本消化器病学会では,菅野健太郎理事長,渡辺守担当理事,木下芳一機能性消化管障害疾患責任者の提唱により,IBSの診断治療ガイドラインを作成することになり,作成委員12名(福土,金子,秋穂,稲森,遠藤,奥村,金澤,神谷,佐藤,千葉,古田,大和),評価委員5名(荒川,藤山,東,藤本,峯),オブザーバー1名(三浦)にてこれを行った.診療を左右する重要なclinical question (CQ)を定義・疫学・病態,診断,治療,予後・合併症について当初102個設定したが,実地臨床に即して62個にこれをまとめた.おのおの3-10個程度のkey wordを選定して文献検索した.その結果,1983年から2011までの7508文献を抽出し,CQ判定に関与する3664文献のエビデンスレベルを判定した.その過程で漏れた重要な41文献はハンドサーチで追加した.エビデンスレベルはA: システマティックレビュー,メタアナリシス,無作為比較対照試験(RCT),C: コホート試験,症例対照研究,D: 連続症例,症例報告,専門家の意見として当初判定し,エビデンスレベルを上げる要因あるいは下げる要因を点数化し,最終的にA,B,C,Dの4水準に分類した.この中の最も水準が高い根拠をもとにステートメントを提案し,診断と治療については,GRADE 1: 行うよう推奨する,GRADE 2: 行うよう提案する,GRADE 2: 行わないよう提案する,GRADE 1: 行わないよう推奨する,のいずれかを付言した.これらに伴う解説文と文献を充実させている.IBSの概念は臨床的に広い範囲を許容するが,定義は国際的に共通性・汎用性があり,RCTやメタアナリシスなど主要なエビデンスのデータのもとになっているRome III基準に沿うものとした.治療薬については,国内で使用される標準的なものを網羅し,保険適用外でも根拠のあるものについて言及した.わが国に適合したIBSの診断治療ガイドラインの必要度は高く,それが実用に供されることを期待する.
索引用語 過敏性腸症候群, IBS