セッション情報 消化器病学会特別企画1(消化器病学会)

GRADEシステムに準じて作成された新ガイドライン最終報告

タイトル 消企1-8指:

GRADEシステムによる改訂肝硬変診療ガイドラインの作成経過

演者 福井 博(奈良県立医大附属病院・消化器・内分泌代謝内科)
共同演者
抄録 GRADEシステムに基づく改訂肝硬変診療ガイドライン(GL)の作成経過について報告する.まず改訂GL作成のためにCQの見直しを行い,2012年12月に作成委員会に諮った上で2013年3月に改訂CQを確定した.CQ改訂にあたっては2年間の肝硬変診療の進歩と2010年版GLに寄せられた意見に基づいて,次のような基本方針で臨んだ.1) 2010年版 GLはやや専門的過ぎて非専門医に利用され辛かったという意見があったため,肝硬変病態の基本的理解のために総論的なCQを準備する.2) 2010年版 GLのCQは原則的に尊重するが,文献検索でほとんど該当文献がなく,結論を得にくかったCQは削除する.3) 2010年版 GL ではエビデンスレベルが低く否定的な結論となったCQでも,医療者・患者の好みや保険診療の実態を考慮するGRADEシステムで推奨度が上がる可能性がある重要なCQは残す.4)新しいCQを追加するためいくつかのCQは統合する.追加した主なCQは1) 肝硬変の原因は何か?2) 肝硬変の基本的な病態はどのようなものか?3)生魚,生肉の摂取はChild CのLCでは禁止すべきか?4)胃静脈瘤に対してB-RTOは有効か?5)PBCに伴う食道胃静脈瘤は治療抵抗性か?6) B-RTOなどのシャント閉塞術は肝性脳症に有効か?7)肝性脳症に対してカルニチンは有効か?8) 門脈血栓症には抗凝固薬が有用か?などである.GRADEシステムによるGLではエビデンスレベルと推奨度が解離する場合,作成者の判断過程を解説文に記載する必要がある.2010年版ではCQとステートメントの限界を補う意味で通読しやすい解説文を執筆し,欧米ガイドラインのような推奨文のまとめを各章ごとに作成したが,今回GRADEシステムの記述をどのように加えるか工夫が必要である.また,保険診療の制約が推奨度に大きく影響し,EBMが後退してしまう可能性があることも問題として残る.現在はまだ検索文献の一次選択を行っている段階であるが,JDDW2013までには大筋がまとまる予定であり,最新の到達点を提示したい.
索引用語 肝硬変, ガイドライン