セッション情報 ワークショップ7(消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と性差

タイトル 消W7-14:

HCVタンパクはエストロゲンとPGC1αによる抗酸化機構を抑制する

演者 富山 恭行(川崎医大・肝胆膵内科)
共同演者 仁科 惣治(川崎医大・肝胆膵内科), 日野 啓輔(川崎医大・肝胆膵内科)
抄録 【目的】C型肝炎ウイルス(HCV)関連肝発癌には酸化ストレスが関与するとともに性差(男性優位)が存在する。そこでエストロゲンがHCV起因性ミトコンドリア障害・酸化ストレスに及ぼす影響について検討した。
【方法】4~6週齢の雌のHCVトランスジェニックマウス(TgM)とnonTgM(C57BL/6マウス)に対して卵巣摘出(Ovx)を行い,Ovx群とSham群の4群(TgM-Ovx, TgM-Sham, nonTgM-Ovx, nonTgM-Sham)を設定し,6ヶ月齢での肝組織,酸化ストレス,ミトコンドリア抗酸化能について解析した。
【成績】Ovx群はSham群にくらべて肝内活性酸素種(ROS)産生が上昇したが、その程度はTgM-Ovx群で最も強く、血清ALT値、肝内中性脂肪含有量も他の3群に比べて有意に高かった。酸化ストレスに対する抗酸化能をそれぞれ血清中dROM(酸化ストレス)とBAP(抗酸化能)で評価すると、TgM-Ovx群ではBAP/dROM値が有意に低下しており代償性の抗酸化能が抑制されていた。Superoxide dismutase (SOD)2、glutathione peroxidase (GPx)1、及びこれらの抗酸化酵素の発現を制御するSIRT3の肝内ならびにミトコンドリア発現量は、nonTgMではOvxにより惹起された酸化ストレスの代償性機構として有意に上昇したが,TgMではむしろ低下する傾向にあった。さらにSIRT3の転写を制御するperoxisome proliferator-activated receptor α coactivator (PGC)1αの肝内発現量はTgM-Ovx群で有意に低値であった。
【考察及び結論】以上の成績からHCV TgMにおいてエストロゲンは抗酸化的に作用するが、HCVタンパクは酸化ストレスに対する代償性の抗酸化機能を抑制することで酸化ストレスを増幅すると考えられた。
索引用語 C型肝炎, 酸化ストレス