セッション情報 消化器病学会特別企画2(消化器病学会)

Helicobacter pylori 除菌治療 -コンセンサスと今後の展開-

タイトル 消企2-3指:

ピロリ菌感染症の診断法

演者 高橋 信一(杏林大・3内科)
共同演者
抄録 日本ヘリコバクター学会2009年ガイドラインによれば以下の6種の検査法が推奨されている.検査法にはそれぞれ長所・短所があるため,その特徴を良く理解して選択する.
胃生検を用いる侵襲的診断法は点診断とも呼ばれ,胃内視鏡検査を行う場合に選択される.点診断では,H. pyloriの胃内分布が不均一のため,生検部位によっては偽陰性となる可能性に注意する.迅速ウレアーゼ試験(rapid urease test:RUT),鏡検法,培養法の3法がある.RUTは取扱いが簡便で,判定結果が1-2時間以内に得られる.鏡検法は環境悪化により変形するcoccoid form(球状)のH. pyloriが診断でき,同時に組織診断が可能である.培養法は,分離培養の後,薬剤感受性試験が施行できる.
胃生検によらない非侵襲的診断法は面診断と呼ばれ,胃内全体のH. pyloriの診断が行える.13C-尿素呼気試験(urea breath test: UBT),便中H. pylori抗原測定法,H. pylori抗体測定法(血清あるいは尿中)の3種がある.面診断法は特に除菌判定に用いられるが,このうち抗体測定法は,その陰性化まで時間を要するため,除菌判定には不向きである.UBTは取扱いが簡便で,感度,特異度が高い.便中抗原測定法も感度,特異度が高く除菌判定にも有用である.抗体測定法も簡便であり感染診断に多く用いられている.
ここで,PPIなど静菌作用を有する薬剤を内服中の場合,偽陰性を防ぐため,内服中止後2週間以上空けて感染診断を行う.また除菌判定は,治療薬中止後4週以降に,できれば6-8週後に行う.除菌後の偽陰性,偽陽性を防ぐためである.さらに,診断精度を上げるため,組み合わせに制限はあるが,2つの検査法の同時算定が保険適用されている.
索引用語 Helicobacter pylori, 診断