セッション情報 消化器病学会特別企画2(消化器病学会)

Helicobacter pylori 除菌治療 -コンセンサスと今後の展開-

タイトル 消企2-4指:

除菌治療のコンセンサス

演者 村上 和成(大分大・消化器内科)
共同演者 沖本 忠義(大分大・消化器内科), 藤岡 利生(大分大・消化器内科)
抄録 1次除菌(PPI/AC療法)はプロトンポンプ阻害薬(PPI) +アモキシシリン(AMPC) + クラリスロマイシン (CAM) を1週間投与する3剤併用療法であり,2000年11月に認可された.PPI/AC療法による除菌失敗の原因として薬剤耐性が最も大きいとされており,CAM耐性菌感染例ではCAMを含む除菌法で除菌率が著明に低下し,さらに除菌不成功例ではCAM耐性獲得が容易に生じることが報告されている.日本ヘリコバクター学会において,2002年から5年間で全国規模の耐性菌サーベイランスが行われた.その後2010年より同様のサーベイランスが再開されているが,耐性率が7.0%から,この約10年間で20%以上のCAM耐性菌の急激な上昇が認められている.今後,保険適用であるPPI/AC療法の治療では,除菌率の低下が危惧される.2007年8月にメトロニダゾール(MNZ)を含むPPI +AMPC+MNZ(PPI/AM療法)がピロリ菌2次除菌治療として適用追加された.このPPI/AM療法はCAMを含む1次除菌に不成功の場合にのみ適用となる.MNZを含む2次除菌治療の有用性は多く報告されており,いずれも90%前後の良好な除菌率を示している.MNZ耐性菌ではCAM耐性菌と異なり,ある程度高い除菌率が期待できることが示されている.海外ではMNZ耐性菌の頻度が高いことが指摘されているが,わが国のMNZの一次耐性率は2-5%となっており,この10年間でMNZのMICに大きな変化は認められていない.しかし,2次除菌に不成功の場合はMNZの耐性率は著明に増加し,70-80%と報告されており,その後の除菌治療に影響を及ぼす可能性がある.現在,保険適用で2次除菌まで行うと97-98%の除菌成功率が得られる計算になる.しかし,除菌症例の増加とともに,保険適用外であるが,3次除菌の必要な症例が増加することが予想される.3次除菌においてはシタフロキサシン(STFX)などのニューキノロン系の抗菌薬が重要になると考えられる.レボフロキサシンには30-40%の耐性菌が存在しており,今後STFX耐性の動向を注目する必要がある.
索引用語 H. pylori, 除菌治療