セッション情報 消化器病学会特別企画2(消化器病学会)

Helicobacter pylori 除菌治療 -コンセンサスと今後の展開-

タイトル 消企2-7指:

除菌後に注意すべき問題点

演者 加藤 元嗣(北海道大病院・光学医療診療部)
共同演者 間部 克裕(北海道大病院・光学医療診療部), 浅香 正博(北海道大大学院・がん予防内科学)
抄録 H. pylori除菌成功後に注意すべき問題点として,逆流性食道炎の発症,生活習慣病の発症や悪化,H. pyloriの再陽性化や再感染などが指摘されているが,最も重要なのが除菌後胃癌の発症である.H. pylori除菌による胃がん予防効果が明らかとなったが,除菌成功後も長期間にわたって除菌後胃癌の発生が認められる.早期胃癌の内視鏡治療後を対象としたJapan Gast Study Group試験(Lancet 2008.)の10年に及ぶ長期観察では,H. pylori除菌による異時癌に対する有意な予防効果は長期に続くものの,除菌成功後の異時癌リスクはなくならないことが明らかとなった.厚生労働科学研究班による全国調査では,全国38施設から除菌後症例6225例(男女比2.2:1,平均年齢56.1才,平均観察期間3.9年)が登録され,186例の除菌後胃癌が発見された.除菌後10年以上経過しても胃癌発症が認められ,除菌後発生率は初発癌で0.4%/年,異時癌で2.9%/年であった.背景疾患による胃癌発生率の高い順は胃腺腫,胃潰瘍,MALTリンパ腫,慢性胃炎,十二指腸潰瘍で背景疾患によって差を認めた. 除菌後胃癌はサイズが小さく,陥凹型病変が多く,粘液形質では胃型あるいは胃型優位の混合型が多い特徴がある.除菌後胃癌は,除菌によって胃癌の発育過程での,腫瘍の増殖抑制,腸型化の抑制,酸分泌亢進による影響などを受ける可能性が考えられた.H. pyloriの除菌成功後も長期間に渡って胃癌リスクが継続するため,除菌後胃癌の特徴を見据えた経過観察が必要である.
索引用語 H.pylori, 胃癌