セッション情報 消化器病学会特別企画2(消化器病学会)

Helicobacter pylori 除菌治療 -コンセンサスと今後の展開-

タイトル 消企2-9:

H. pylori除菌による胃がん予防の年齢別費用対効果

演者 菊地 正悟(愛知医大・公衆衛生学)
共同演者 加藤 元嗣(北海道大病院・光学医療診療部)
抄録 【目的】H. pylori(Hp)除菌によって胃がんが予防できることが明らかになったが,費用対効果について,特に除菌年齢ごとの費用対効果は十分議論されていない.除菌に要する費用と医療費削減効果を年齢ごとに推定する.【方法】2010年の日本人口を15-74歳の5歳階級に分け,各階級の20%がTest and treatを受けた場合に要する費用と,89歳までに胃がん発生が減少することによる医療費削減効果を比較する.年齢別Hp感染率は,検診受診者の最新データを用い,除菌によって予防される胃がんの割合は15-19歳75%から70-74歳50%まで漸減するものとし,Hp感染が飽和状態だった1975年の地域がん登録による全国推定値を感染者の胃がん罹患率を用いた.対象は2011年の死亡率で死亡して徐々に人口が減少していくものとした.感染検査は1件\1,000,除菌は1件\14,000,胃がん1例の治療費は平均\1,425,531とした.【成績】5歳階級の下限年齢-(検査・除菌費用:期待効果 億円単位)は15歳-(22:26),20歳-(30:32),25歳-(45:43),30歳-(68:60),35歳-(98:82),40歳-(91:84),45歳-(98:90),50歳-(109:101),55歳-(128:124),60歳-(101:147),65歳-(69:122),70歳-(43:104)で,感染率の低い25歳未満と予防効果の小さい60歳以上で除菌に要する費用が医療費削減効果より大きかった.【結論】胃がん予防は医療費以外の効果もあるので,必ずしも費用が大きいから効果が不十分とは結論できない.病悩や死亡による経済的損失は若い年代の方が大きいと考えられる.60歳以上で有効な胃がん予防を実施するには,test and treatだけでは不十分であり,リスクに応じた定期的な画像検査など何らかの工夫が必要と考えられる.【謝辞】厚労科学研究費H22-がん臨床-一般-010の助成を受けて実施しました.また同研究費の研究グループの各先生からデータの提供を受けました.深謝します.
索引用語 費用対効果, 除菌