セッション情報 消化器病学会特別企画2(消化器病学会)

Helicobacter pylori 除菌治療 -コンセンサスと今後の展開-

タイトル 消企2-10追:

任意内視鏡胃癌検診におけるHelicobacter pylori screeningのマルコフモデルを用いた費用対効果分析

演者 酒井 恭子(済生会吹田病院・臨床検査科DELIMITER京都大大学院・健康情報学)
共同演者 猪飼 宏(京都大大学院・医療経済学), 岡上 武(済生会吹田病院・消化器肝臓病センター)
抄録 [目的] 無症候者に対する胃癌予防Hp screening(test and treat)の費用対効果は米国では優れないと報告されている.日本では決断分析モデルを用いた分析報告はない.任意内視鏡胃癌検診にHp screeningを加え陰性者の検診回数を減じることの経済評価を行う.
[方法] デザイン:マルコフモデルを構築,仮想コホートをシミュレーションし費用対効果分析を行った.セッティング:任意検診機関.対象:40歳初回内視鏡検診で正常または胃炎以外所見なく,定期的検診を受ける予定の男女.主たる介入:初回検診時Hp検査と陽性者除菌.Hp-群には内視鏡検診を3年毎に施行.除菌群は成否にかかわらず毎年施行.対照:Hp検査無で内視鏡検診を毎年施行.主たるアウトカム: ICERまたは一方が費用効果とも優る場合NMB.
[成績] 基本分析:介入群;LYG49.21年(平均寿命89.21歳),費用303700円vs非介入群;LYG 49.15年(89.15歳),費用509900円.WTP500万円の場合のNMBは,506300円.内視鏡回数減,胃癌発生率低下による費用減少が,Hpscreening費用増加を上回り介入群優位となった.感度分析: Hp-早期胃癌年間発生率:0.00001でNMB850000円,0.003では100000円.Hp-進行胃癌:0.000001でNMB850000円,0.0003でNMB200000円.Hp-胃癌発生率が高いほど,除菌の胃癌予防効果が低下しNMBが減じた.
[結論] 任意内視鏡胃癌検診へのHp screening導入は,費用対効果の改善をもたらす.Hp-胃癌,除菌後胃癌発生率は,結果への影響が大きく今後疫学研究によるデータ集積が期待される.
LYG:lifeyears gained,獲得生存年
ICER:Incremental Cost Effectiveness Ratio,増分費用効果比=増分費用÷増分効果
NMB:Net Monetary Benefit,臨床効果を金銭に換算して計算した値
WTP:Willingness to pay,一生存年延ばすための支払可能限度額
索引用語 H.pylori, 費用対効果