セッション情報 |
消化器内視鏡学会特別企画1(消化器内視鏡学会)
内視鏡診療と医療倫理
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タイトル |
内企1-基調講演:保険適用までの道筋とエビデンスの構築
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演者 |
小早川 雅男(国立国際医療研究センターDELIMITER医薬品医療機器総合機構) |
共同演者 |
上村 直実(国立国際医療研究センター) |
抄録 |
わが国の消化器内視鏡医は世界でも最も卓越した内視鏡診療技術を有しているが,臨床現場では保険適用に関して多くの課題があり苦労することも多い.さらに,その技術が科学的なエビデンスとして欧米のトップジャーナルに掲載されることが少ないことも大きな問題と思われる.本企画の基調講演として保険収載や診療点数の増点までの道程と欧米と日本における臨床研究の取り組み方の違いを踏まえた上でエビデンスの構築について述べる.(1)保険適用への過程 新規性の高い医療機器の保険適用には薬事承認が必要であるため,治験等の実施が求められ,医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて有用性と安全性が評価される.一方,医療技術の場合は,まず学会が内科系保険連合(内保連),外科系保険連合(外保連)へ要望書を提出し,これを中医協が議論した上で保険収載となる.その他,保険収載までの道筋として,先進医療,未承認医療機器に関する委員会など様々なルートがある.内視鏡学会の薬事・社会保険委員会では主に外保連ルートを用いた要望を行っている.例えば,胃ESDの増点やEUS-FNA等の保険適応など多くの要望は外保連ルートで保険収載されている.一方,大腸ESDの保険適用は先進医療を用いたルートが奏功したモデルである.この保険収載への申請過程の中で使用する薬剤や医療機器の薬事承認の有無が大きなハードルと言える.(2)エビデンスの構築(研究デザインと質の重要性) 欧米では新規性のある技術はRCT,コホート研究として有用性の検証が行われるが,日本では技術の標準化に対する認識が乏しく,優れた医療技術でも単施設の症例シリーズとして報告されたままであることが多い.日本の研究は,消化器内視鏡関連の専門誌に多くアクセプトされているものの,エビデンスレベルの高い研究デザインで質の高い臨床研究を計画しない限りトップジャーナルへの掲載は困難と思われる.これらを打開していくために,学会での質の高いデータベースの構築と研究レジストリを活用した効率性の高い臨床研究を推進していくことが必要である. |
索引用語 |
保険適用, エビデンス |