セッション情報 消化器内視鏡学会特別企画1(消化器内視鏡学会)

内視鏡診療と医療倫理

タイトル 内企1-1指:

保険適用外の新たな内視鏡技術を行うための工夫:大腸ESDから学んだこと

演者 藤城 光弘(東京大附属病院・光学医療診療部)
共同演者
抄録 内視鏡医療の現状では,百人の内視鏡医がいれば百通りの内視鏡流派があり,また,百人の患者に内視鏡を行えば各々違った百通りの内視鏡を行うのが真の内視鏡専門医であると私は考えている.血液検査や画一的な投薬治療などと違い,内視鏡技術の評価,普遍化,均霑化が難しい所以である.そのような背景の下,ある内視鏡技術を行う場合,それが保険適用内の技術なのか,適用外の技術なのか,判断することは必ずしも容易ではない.まさに大腸ESDがよい例であった.胃,食道では,ESDがEMRから分離する形で保険収載されたが,大腸ではEMRとは別の技術として先進医療を経た.先進医療とは,将来的な保険導入のための評価を行うものとして,未だ保険診療の対象に至らない先進的な医療技術等と保険診療との併用を認めたもので,厚生労働大臣が定める「評価療養」の1つである.有効性及び安全性を確保する観点から,技術毎に施設基準を設定し,施設基準に該当する医療機関は届出により保険診療との併用ができるものであり,大腸ESDでは全国143施設が先進医療の承認を受けた.平成24年4月保険収載に至ったが,これは,日本消化器内視鏡学会が薬事・社会保険委員会の下部組織として「大腸ESDデータ検討委員会」を立ち上げ,「先進医療として施行された大腸ESDの有効性と安全性に関する多施設共同研究(前向きコホート研究)」を展開し,全国から1500例を超える症例登録を得た功績も高く評価されてのことである.大腸ESDの保険収載を通して非常に多くのものを学んだはずである.先進医療を経ることで,倫理性の担保が得られること,医療機器・材料費,人件費から割り出した技術原価が明確となること,技術開発費は医療機関の持ち出しではなく患者に負担頂けること,多施設前向き研究としてより高いエビデンスを構築できること,有効性及び安全性が示されれば必ず正当な保険点数を得て保険収載に至ること,などであろう.大腸ESDを皮切りに先進医療を経て保険収載に至る内視鏡技術が今後も生み出されていくことを期待したい.
索引用語 先進医療, 大腸ESD