セッション情報 消化器内視鏡学会特別企画1(消化器内視鏡学会)

内視鏡診療と医療倫理

タイトル 内企1-3:

フィブリン糊と吸収性組織補強材を用いた内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)潰瘍の被覆に関する検討

演者 鷹尾 俊達(静岡がんセンター・内視鏡科)
共同演者 竹川 佳孝(化学及血清療法研究所), 小野 裕之(静岡がんセンター・内視鏡科)
抄録 【目的】近年,ESD後の遅発性穿孔や後出血,狭窄等の偶発症を予防する目的で,ESD潰瘍にフィブリン糊を用いて吸収性組織補強材(以下,補強材)を貼付する治療法の臨床応用が期待されている.フィブリン糊と補強材の併用は強固な接着及び被覆効果を示すことから,外科分野では複数領域において安全性や有効性が報告されている.しかし,消化管内視鏡領域においては基礎的検討の報告がなく,その安全性や有効性は確立されていない.当該領域における消化液や蠕動の影響,感染等のリスクの確認を行うため,今回われわれは臨床応用に先立って動物実験による基礎的検討が必要であると考えた.本研究の目的は,動物のESD潰瘍にフィブリン糊を用いて補強材を貼付した際の潰瘍の治癒過程を肉眼的および組織学的に評価し,本処置法の有効性を実験的に検証することである.【方法】食用豚(品種:LWD)9頭を用いて動物実験を行った.全身麻酔下に胃ESDを行い,潰瘍を豚1頭あたり2箇所ずつ作成した.2箇所のESD潰瘍のうち,一方の潰瘍にはフィブリン糊を用いて補強材を貼付し,コントロールとなるもう一方の潰瘍には処置を行わなかった.ESD翌日に確認内視鏡を行い,偶発症の有無や補強材脱落の有無を評価した.ESD1週後,4週後,8週後に各3頭の豚を安楽死させ,潰瘍部を肉眼的及び組織学的に観察した.本研究計画書は「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(日本学術会議)」に沿って作成され,当院の動物実験委員会の承認を受けた.【成績・結論】本研究は現在進行中であり,4週までの肉眼的観察の結果,偶発症及び補強材の脱落は認められていない.学会では,全観察ポイントの組織学的検討結果も併せて報告する予定である.本治療法には補強材の消化管内へのデリバリー方法や貼付方法など複数の課題が存在する.学会では本研究の成績とともに,課題に対して我々が行った工夫に関しても提示し,内視鏡的治療の発展に貢献したい.
索引用語 ESD, フィブリン糊