セッション情報 消化器内視鏡学会特別企画1(消化器内視鏡学会)

内視鏡診療と医療倫理

タイトル 内企1-4指:

内視鏡診療におけるエビデンスの構築に必要な臨床研究・試験の方法

演者 武藤 学(京都大大学院・腫瘍薬物治療学)
共同演者
抄録 医療の質の担保と普及のためにはエビデンス構築は極めて重要である.内視鏡医療は,病変の診断,病態の把握,組織の回収,低侵襲治療などの面で欠かせない医療技術であるが,観察者や術者の技量に依存する面が多くエビデンス構築が難しい分野でもある.そこには,客観性の担保と再現性の確保の難しさが大きく関与しているが,エビデンス構築は医療の標準化,すなわち患者への質の高い最良の医療の提供につながるため極めて重要な課題である.われわれは,これらの課題を克服するために,主観的になりがちな内視鏡診断の評価や品質管理が困難な内視鏡治療の評価を,科学的手法で行ってきた.特に,診断においては,頭頸部および食道の早期癌検出と診断能の比較を画像強調法と通常白色光観察で行い(J Clin Oncol. 28:1566-72. 2010),胃陥凹性病変の鑑別診断能の比較を白色光非拡大と拡大併用画像強調法で行って(Gastroenterol 141:2017-25 2011) エビデンスを構築した.治療に関しては,Japan Clinical Oncology Group (JCOG)内で複数の前向き試験を実施している.また,未承認医薬品と未承認医療機器のコンビネーションによる医師主導治験も実施し,医療開発も行っている.これらの臨床研究を実施する際には,試験デザインとエンドポイントの設定が重要になるが,内視鏡医学分野では前例となる試験がないため,研究者一同で検討を重ねて試験実施計画書を作成した.この作業は臨床研究の方法について学ぶ機会を多くの内視鏡医に与えた点で評価できる.また,登録症例においては中央判定や研究者同士によるreviewを行い,診断法や治療技術の品質管理を徹底した.この作業は,試験の質の担保のみならず,日常診療の質の向上にも貢献している.われわれは現在,多くの施設と複数の多施設共同研究を実施し,内視鏡医療におけるエビデンス構築とその体制作りを進めている.今後,これらの活動が我が国における質の高い内視鏡医療のエビデンス構築につながることを期待している.
索引用語 エビデンス, 内視鏡医療