セッション情報 肝臓学会・消化器病学会特別企画1(肝臓学会・消化器病学会合同)

腹腔鏡・肝生検の現状と再評価-次世代への継承とその問題点

タイトル 肝消企1-基調講演1:

安全で負担が少ない腹腔鏡検査の進歩

演者 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者
抄録 B型やC型慢性肝炎の進行度や活動性の評価,および自己免疫性肝疾患や代謝性肝疾患の鑑別診断や確定診断に腹腔鏡が重要な役割をはたし,従来は貴重な検査法として用いられていた.最近では,侵襲性が高いことから実施する施設が減少している.しかし,機器の進歩によって侵襲性が低くなり,腹壁の切開は5 mmで施行可能になった.特にバーサステップというメッシュタイプのポートを用いることによって腹壁からの出血が皆無になり,腸管損傷のリスクがなくなった.検査時間は20分程度で施行できるため,患者の負担が軽減されている.
最近では,最も腹腔鏡が有用であるのはB型慢性肝炎の診断である.血液検査や超音波を用いる検査では肝線維化の進行程度を把握することが困難であるが,腹腔鏡検査によって肉眼で肝を観察できるため,血液検査所見では推測不可能な肝線維化が,肉眼的に把握できる点が有用である.
また,自己免疫性肝炎や原発性胆汁性肝硬変などの診断に,肝の肉眼所見が重要であることは言うまでもない.また,近年増加している非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と脂肪肝(NAFLD)の鑑別についても腹腔鏡が重要である.
肝癌では,肝皮膜近傍や心臓に隣接する腫瘍に対して,腹腔鏡下でラジオ波焼灼療法を行うことによって,安全で確実な治療が行える.このように,進歩した機器を用いることによって,安全に腹腔鏡検査が行え,臨床的に有用な情報が得られるため,若手医師の教育を含めて,腹腔鏡検査を見直す時期に来ていると思われる.
索引用語 腹腔鏡, 慢性肝炎の診断