セッション情報 肝臓学会・消化器病学会特別企画1(肝臓学会・消化器病学会合同)

腹腔鏡・肝生検の現状と再評価-次世代への継承とその問題点

タイトル 消_肝消企1-2:

当院における腹腔鏡下肝生検の現状

演者 真田 拓(福井県済生会病院・内科)
共同演者 野ツ俣 和夫(福井県済生会病院・内科), 田中 延善(福井県済生会病院・内科)
抄録 【緒言】近年,各種モダリティによる非侵襲的な肝線維化の診断法が進歩しているが,当院では2003年1月から2012年12月末までの10年間で677例と,積極的に腹腔鏡下肝生検を行っている.今回当院での現状を報告するとともに,画像や血小板数と腹腔鏡所見の合致,臨床像と乖離する経験の多いHBs抗原陽性例に関して検討した.【対象】2008年1月から2012年12月末までの5年間に施行した300例.年齢中央値は60歳(18~83歳).男性138例:女性162例.【結果】成因の内訳は,HCV(106例/35.3%)・HBV(78例/26.0%)・アルコール(22例/7.3%)・NASH/NAFLD(31例/10.3%)・AIH12例(4%)・PBC31例(10.3%)・その他(20例/6.7%)であった.結節肝は75例で,画像との一致率は,HCV22/28例(78.6%)・HBV12/14例(85.7%)・アルコール6/7例(85.7%)・NASH/NAFLD7/8例(87.5%)・AIH2/6例(33.3%)・PBC0/5例(0%)で,自己免疫性肝疾患では画像との乖離を認めた.血小板数との検討では,15万/μl以上の症例は147例で,うち結節肝の症例は33例で,アルコール6/11例(54.5%),NASH/NAFLD5/20例(25%),PBC7/27例(25.9),HBV7/49例(14.3%),HCV4/26例(15.4%)であり,非ウイルス性肝疾患では結節肝でも血小板が保たれている症例が多くみられた.また,10万/μl未満の症例は57例で,うち結節肝以外の症例は14例で,HCV9/35(25.7%),HBV3/11例(27.3%),AIH1/5例(20%),NASH・NAFLD1/4例(25%)であり,約1/4は肝硬変ではなかった.急性例・アルコール摂取20g/日以上の飲酒歴を除外したHBs抗原陽性例は64例で,ガイドラインにおける治療対象基準(ALT≧31IU/lかつHBV-DNA>4 log copies/ml)を満たさない17例(平均62.3歳(33~74歳),男性11例・女性6例,全例HBe抗原陰性)では,画像上5例に進行した慢性肝疾患が疑われたが,腹腔鏡 は結節肝1例・斑紋結節肝5例 ・斑紋肝4例・白色肝7例,組織はF4:0例・F3:4例・F2:4例・F1:7例・F0:2例であり,肝線維化進行例が存在し,腹腔鏡では約半数に何らかの所見を認めた.【結語】腹腔鏡は,画像や検査値との乖離例の診断に有用と思われる.
索引用語 肝臓, 腹腔鏡