セッション情報 肝臓学会・消化器病学会特別企画1(肝臓学会・消化器病学会合同)

腹腔鏡・肝生検の現状と再評価-次世代への継承とその問題点

タイトル 肝_肝消企1-3:

腹腔鏡下肝生検が診断に有用であった自己免疫性肝炎の一例

演者 安中 哲也(岡山大病院・消化器内科)
共同演者 池田 房雄(岡山大病院・消化器内科), 山本 和秀(岡山大病院・消化器内科)
抄録 症例は66歳,女性.X年4月~X+1年4月までプロポリス内服.X+1年4月より全身倦怠感,5月31日に黄疸,下腿浮腫,腹部膨満を自覚し前医受診.血液検査ではT.Bil 9.24 mg/dL, AST 352 IU/L, ALT 172 IU/L, ALP 1104 IU/L, PT 47%であり,急性肝不全として緊急入院.肝炎ウイルスマーカーは陰性.抗核抗体80倍,IgG 2075 mg/dL.画像検査では顕著な肝萎縮と胸腹水貯留を認めた.入院後よりウルソデオキシコール酸とグリチルリチン製剤での加療を開始された.AST, ALTは60~80 IU/Lで横ばいとなったため,6月よりプレドニゾロン30mg/日を開始するも肝機能検査は改善は不充分であった.またステロイド開始後より血糖コントロール目的にインスリン 50単位/日を投与された.自己免疫性肝炎,薬物性肝障害,脂肪性肝疾患などを鑑別に治療方針決定目的に同年12月,当院紹介入院.腹腔鏡検査では馬鈴薯肝の形態であった.S3, S4, 後区域が脱落し,S1, S2, S8に再生塊がみられた.再生塊には胆汁うっ滞と思われる暗褐色の部分と,脂肪沈着による黄色調の部分がそれぞれみられた.再生塊はICG静注により染色された.右葉S4に相当する部分は広範陥凹となっており,同部に赤色紋理を多数みとめた.肝萎縮が強く生検針が届かなかったかったため,肝S2再生塊からエコー下肝生検で行った.肝生検組織を再生塊から採取したためか炎症や線維化は見られず所見は脂肪沈着のみであったが,腹腔鏡所見から自己免疫性肝炎と診断.ステロイド糖尿病を合併していたため,アザチオプリンでの治療を開始した.以後,肝機能検査は改善.インスリン投与量も減少し良好に経過している.本症例は腹腔鏡での肝表面所見が確定診断の決め手となり,適切な治療を行うことができた.自己免疫性肝疾患には特異的なマーカーが存在せず,またエコー下生検ではサンプリングエラーの可能性もある.非典型例や急性発症例ではしばしば診断に苦慮することがあるため,腹腔鏡検査は非常に有用である.
索引用語 自己免疫性肝炎, 腹腔鏡