セッション情報 肝臓学会・消化器病学会特別企画1(肝臓学会・消化器病学会合同)

腹腔鏡・肝生検の現状と再評価-次世代への継承とその問題点

タイトル 消_肝消企1-4:

自己免疫性肝疾患におけるNBIを用いた腹腔鏡下肝生検の有用性

演者 辻 恵二(広島市立安佐市民病院・消化器内科)
共同演者 脇 浩司(広島市立安佐市民病院・消化器内科), 桑原 健一(広島市立安佐市民病院・消化器内科)
抄録 【目的】自己免疫性肝疾患の診断において腹腔鏡検査は有用である.近年NBIを用いた腹腔鏡検査が可能となり,より詳細な肝表面の観察が可能となった.今回我々は自己免疫性肝疾患におけるNBIを用いた腹腔鏡下肝生検の有用性について検討した.【方法】対象は自己免疫性肝疾患を疑われ当院にて腹腔鏡下肝生検をおこなった33例,男性6例,女性27例,年齢中央値61(33-80)歳.うち2009年からの19例は,NBIを併用した.生検前診断は原発性胆汁性肝硬変(PBC) 28例,自己免疫性肝炎(AIH) 4例,PBC-AIHオーバーラップ症候群1例.NBI併用例は通常観察,NBI観察,ICG大量静脈注射後観察,最後にICG大量静脈注射後のNBI観察を行った後,針生検を行って診断した.【成績】腹腔鏡下肝生検による診断にて,PBC-AIHオーバーラップ症候群は7例となり,術前PBCが疑われた3例はPBC優位,AIHが疑われた3例のうち1例がPBC優位,2例がAIH優位,PBC-AIHオーバーラップ症候群が疑われた1例はPBC優位のオーバーラップ症候群と診断された.また9例で病変の分布の不均一性を認めた.【症例】67歳男性.初診時AST 129 IU/l,ALT 96 IU/l,IgG 3304 mg/dl,IgM 406 mg/dl,ANA 陰性,抗平滑筋抗体陰性,LKM-1抗体陽性,AMA 640倍.腹腔鏡観察では両葉はなだらかな隆起性変化と再生結節が存在し,reddish patchと白色紋理を認め,大部分が進行したPBCの形態であったが,一部には赤色紋理と血管増生を認め,AIHの形態も併存した.NBI併用観察ではこれらの所見は明瞭に観察され,PBC優位のオーバーラップ症候群と診断した.生検組織においてもPBC-AIHオーバーラップ症候群に矛盾ない所見であった.【考案】NBI併用腹腔鏡検査では,手元操作ひとつで通常光/NBI観察を切り替えることができ,自己免疫性肝疾患に特徴的な所見の観察やPBC-AIHオーバーラップ症候群における疾患の優位性まで診断可能である.【結語】複雑化している非定型的自己免疫性肝疾患の診断においても,NBI併用腹腔鏡下肝生検は有用であり,他の症例も含め報告する.
索引用語 自己免疫性肝疾患, 腹腔鏡