抄録 |
【目的】原発性胆汁性肝硬変(PBC)は組織学的診断に際し,病変分布が不均一となりsampling errorが危惧される.PBCには特徴的な肝表面像(SF)を見るが,腹腔鏡は侵襲性と手技に熟練を要し件数が減少している.SFと臨床背景,組織学的病期を比較,PBC診断における腹腔鏡の位置付けの再考を試みた.【方法】1999-2010年に腹腔鏡下肝生検を実施,当科にて確定診断されたPBC 98例(男 12人 女86人: 54.8歳±8.8)を対象とした.臨床病期,血液生化検査に加え食道胃静脈瘤(EGV)の有無,SFは表面凹凸(ED),赤色紋理(RM),被膜混濁(CI),脈管紋理(VM),円靭帯血管拡張(PVC)を3段階,白色紋理(WM)を4段階に半定量化し赤色班(RP)の有無で評価した.14G Tru-Cut針で採取標本はScheur分類(SC)し臨床背景とSFと比較した.【成績】無症候性(aPBC) 65例,症候性33例(s1PBC 27例,s2PBC 6例)であった.AST 58.2±51.1 IU/l,ALT 61.6±69.2 IU/l,γ-GTP 227.8±270.7 IU/l,ALP 549.5±379.0 IU/l,T.Bil 0.97±1.01 mg/dl,IgM 334.9±274.2,mg/dlであった.内視鏡を78例で実施,EGV 10例が確認された.SCはI期 54例,II期 26例,II期 11例,IV期7例であった.臨床病期による階層化(aPBC,s1PBC,s2PBC)では,ED (0.9±0.5, 1.5±1.0, 2.5±0.9),VM(0.9±0.6, 1.6±0.9, 2.2±1.0),WM(1.3±1.0, 1.5±1.3, 2.8±1.7)に有意差が確認された.SCも,aPBC 1.3±0.5,s1PBC 2.3±1.0,s2PBC 3.5±0.6と臨床病期で差異を認めた.SCとED,VMに相関を認めた.EGVでは,有意にEDとVMが進行しPVCが観察された.RM,WM,RP,CIとSCには関連はなかった.【結論】ED,VMが臨床病期,組織学的病期との相関が確認された.RM,WM,RPは組織学的病期とは乖離し,不均一な分布が示唆された.PBC組織学的診断で腹腔鏡は肝表面像を確認し得て検体採取量も多く精度が高いことが確認された. |