抄録 |
当科において腹腔鏡でNASHと診断し得た症例は23例であった.その中の1例を症例提示する.症例:62歳,女性.脳動脈瘤,橋本病で他院通院中に脂肪肝を伴った肝障害を指摘され当科紹介となった.既往歴:55歳時に脳動脈瘤クリッピング術,62歳時に橋本病の診断を受け内服加療中.家族歴:特記すべきことなし嗜好歴:特記すべきことなし(飲酒歴なし)検査所見:WBC 2300/mm3, RBC 418×104/μl, Hb 12.3 g/dl, Plt 8.6×104/μl, Alb 3.9 g/dl, T-Bil 1.1 mg/dl, AST 48 IU/L, ALT 47 IU/L, γ-GTP 81 IU/L, TC 183 mg/dl, TG 132 mg/dl, IgG 2310 mg/dl, IgM 222 mg/dl, PT 66 %, フェリチン144.6 ng/dl, F-T3 2.7 pg/dl, F-T4 1.3 ng/ml, TSH 0.952 μIU/ml, HBsAg(-), HCVAb(-), ANA(Homo 40倍), AMA(-) 腹部超音波検査:肝臓はpre-LC pattern with fatty infiltrationであった.経過:入院時身体所見では明らかな異常所見は認めなかった.BMIは31.9であった.肝障害の原因としてNASHとAIHが鑑別に挙げられた.入院後4日目に腹腔鏡を施行した.内視鏡所見では肝臓は両葉とも正常大であった.色調は黄色斑を一部交えた赤褐色調であった.肝縁は鈍で線維化を認めた.表面はびまん性に2~6 mmの小結節状であった.白色紋理,赤色紋理は認めなかった.リンパ小水胞は散在していた.内視鏡診断ではNASHを原因とする肝硬変が最も疑われた.病理組織診断では中等度の炎症活動性を示す完成された肝硬変であり,全体の1/3程度の脂肪沈着を認めた.アルコール摂取歴がなく,自己免疫性肝炎が否定的であったため,NASHによる肝硬変と診断した.結語:内視鏡所見がNASHと肝硬変の診断に有用であった.肝硬変の診断には腹腔鏡が必須であるが,内視鏡所見で黄色調を呈することやリンパ小水胞が散在することでNASHと診断出来る事が示唆された. |