セッション情報 肝臓学会・消化器病学会特別企画1(肝臓学会・消化器病学会合同)

腹腔鏡・肝生検の現状と再評価-次世代への継承とその問題点

タイトル 肝_肝消企1-8:

非アルコール性脂肪性肝疾患診断における腹腔鏡検査の有用性

演者 徳本 良雄(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学)
共同演者 阿部 雅則(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学), 日浅 陽一(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は単純性脂肪肝(SS)から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を経て肝硬変に至るが,臨床検査値からの線維化予測の評価法は確立されていない.さらに,アルコール性肝障害との鑑別は病歴以外では困難である.そこでNAFLD診断における腹腔鏡の有用性を明らかにする目的で検討を行った.【方法】対象は当科で腹腔鏡下肝生検を施行し組織学的にSSまたはNASHと診断した81例(男性53例,女性28例.年齢19-72歳),および同時期にアルコール性肝硬変(AL)と診断した13例.腹腔鏡像は島田分類に準じて観察し,腹腔鏡で観察した内臓脂肪量を軽度~高度に分類した.肝組織はBruntの分類およびNASスコアを用いた.【成績】組織学的にSS,NASHと診断した症例は各32/59例であった.腹腔鏡像は100/200/300/400番地で各34/21/11/15例(SS: 24/8/0/0,NASH: 10/13/11/15)に分類された.肝表面の色調は結節肝の1例を除き黄色調を帯び,42例(51.9%)で豹紋状紋理を観察した.豹紋状紋理は100/200/300/400番地で63.6/ 57.1/ 27.3/ 0.0%であり進展に伴い減少した.100番地では小陥凹がFL/ NASH で16.7/70.0%みられた.臨床検査値は上記4群の順に血小板24.5±6.7/ 21.6±4.3/ 15.1±4.3/ 9.9±5.7万,Alb 4.7±0.4/ 4.4±0.4/ 4.2±0.6/ 3.6±0.6 g/dl,ChE 211±44.7/ 204±31.9/ 188±31.6/ 130±60.6 U/lと段階的に低下したが,Stage別では段階的な低下はなかった.NASH肝硬変とAL肝硬変の比較ではALで肝腫大,リンパ小水疱が有意に多く,NASH肝硬変で色調が黄色を帯びる例が多かった.腹腔鏡で観察した内臓脂肪量はALで有意に減少していた.【結論】脂肪沈着は線維化進展に伴い減少し部位差もあることから,腹腔鏡像を加味することで正確な線維化,脂肪沈着の評価が可能となる.さらにNASHとAL肝硬変を腹腔鏡像により鑑別できる可能性がある.腹腔鏡検査はNAFLDの診断および進展度評価に有用である.
索引用語 腹腔鏡, 非アルコール性脂肪性肝疾患