セッション情報 肝臓学会・消化器病学会特別企画1(肝臓学会・消化器病学会合同)

腹腔鏡・肝生検の現状と再評価-次世代への継承とその問題点

タイトル 肝_肝消企1-9:

門脈血栓を合併し特異な腹腔鏡像を呈した非定型Churg-Strauss症候群の一例

演者 谷合 麻紀子(東京女子医大・消化器内科)
共同演者 徳重 克年(東京女子医大・消化器内科), 橋本 悦子(東京女子医大・消化器内科)
抄録 Churg-Strauss症候群(CSS)はかつてアレルギー性肉芽腫性血管炎と呼ばれ,現在は国際的にCSSの名称が用いられる.典型例は気管支喘息が先行したのち末梢血好酸球増多を伴う壊死性小動静脈炎・肉芽腫が出現し,末梢神経炎,皮疹,脳心血管病変など多彩な症状を呈する疾患である.典型例の診断は比較的容易であるが非定型CSS症例は診断に苦慮することも多い.今回,非定型的な経過と特異な腹腔鏡所見を呈したCSSを経験したので報告する.【症例】66歳女性.既往歴;1年前に軽度鼻炎様症状あり,膠原病の家族歴あり.飲酒・喫煙なし.現病歴;発熱にて近医受診し抗生剤処方,内服翌日全身に皮疹出現し内服中止.発熱が持続するため,薬剤投与8日後近医にて採血,白血球増多と肝胆道系酵素・CRP上昇を認め,前医に紹介入院.胆嚢炎疑いとして加療され約10日でCRPと肝酵素は低下したが胆道系酵素と白血球数高値が持続し,第28病日に消化入院となった.現症;身長158cm体重53kg,意識清明,腹部に異常所見なし.検査所見;AST21 U/l,ALT19 U/l,ALP550U/l, gGTP63U/l, Alb2.7g/dl, 白血球数6420/mm2(好酸球43%)Hb10.4g/dl,血小板数30.6万/mm2,プロトロンビン時間78.4%,肝炎ウイルスマーカー陰性,IgG3038mg/dl, IgM155mg/dl, 抗核抗体320倍(均一型),抗ミトコンドリアM2抗体陰性.腹部CT造影所見にて,門脈抗区域枝と内側上区域枝に血栓性病変と後区域・内側上区域に造影不良域を認めた.第50病日に腹腔鏡施行,肝両葉で肝紋理の増強し小陥凹散在,大小様々な大きさの黄白色調サルコイド様結節性病変,地図状青色調の浅い陥凹の多発を認め,小門脈枝閉塞による肝細胞脱落が疑われた.肝組織では,門脈域は炎症性に著明に拡大し浸潤細胞の約60%が好酸球で,肉芽腫性血管炎を認めた.本例は,明らかな先行症状を欠くが末梢血好酸球増多と血管炎症状を認め,わが国の基準でCSS疑い例,Wattsらの分類(2007)で非定型CSSとされ,特異な腹腔鏡所見が重要な診断の手がかりとなった.
索引用語 Churg-Strauss症候群, 門脈血栓症