セッション情報 肝臓学会・消化器病学会特別企画1(肝臓学会・消化器病学会合同)

腹腔鏡・肝生検の現状と再評価-次世代への継承とその問題点

タイトル 肝_肝消企1-10:

地域基幹病院における腹腔鏡及び肝生検の意義に関する臨床的検討

演者 高橋 達(魚沼病院・内科)
共同演者 三浦 智史(国立がん研究センター東病院・緩和医療科・精神腫瘍科), 柳 雅彦(長岡赤十字病院・消化器内科)
抄録 【目的】地域基幹病院における腹腔鏡肝生検の臨床的意義について検討した.【対象と方法】対象は2003年5月からの7年1カ月に施行した診断的腹腔鏡(L)68例,エコー下肝生検(U)143例,手術的生検2例の計213例である.自己免疫性肝疾患(PBC, PSC, AIH)は可能な限りLを実施し,B,C型慢性肝炎(CH-B, C)はUを主とした.アウトカムをpeer reviewのある論文数とした.【結果】対象とした213例の平均年齢は55.4±13.1歳,(最高85歳,最低13歳),男女比85:128で,L実施率は31.9%であった.LとUを合わせた肝生検全体ではCH-Cが125例と最も多く,PBC 28例,AIHと薬剤性肝障害が10例ずつ,NASH 9例の順であった.L実施率はPBC 96.4%(27/28),PSC 75.0%(3/4),AIH 60.0%(6/10),NASH 55.6%(5/9)の順で,CH-C 4.8%(6/125)とCH-B 0%(0/8)では低率であった.Lの合併症は一過性疼痛,発熱などで,開腹や輸血を要する例はなかった.症例では白血球と血小板減少を伴うCH-CのSVR例(肝臓(2007;48:498),カルバマゼピンによる低Na血症にIFNが影響した例(Int J General Medicine 2008;1:21),良性反復性肝内胆汁うっ滞症(Gastroenterol Endosc 2009;51:2723),肝血管肉腫(肝臓2009;45:451),R-CHOP療法中のHBV再活性化(Hepatology International 2009;3:316),腹膜生検で菌を証明した結核性腹膜炎(J Clin Gastroenterol 2009;2:408),AIHと鑑別出来たNASH(肝臓2010;51:65)の7編,臨床研究は CH-Cに対するIFN治療(長岡赤医誌2007;20:29),PBCにおけるCCD38陽性形質細胞のcoronal arrangement(Hepatology 2012:55:846)の2編であった.【結論と考察】Lは自己免疫性肝疾患の臨床に役立つ.腹膜疾患はL直視下生検が唯一の診断法である.一方,ウイルス肝炎の活動度と病期判定にはUが有用であった.アウトカムは9編と良好であり,従って,これらの診断的手技は次世代に受け継がれるべきである.
索引用語 腹腔鏡, 肝生検