セッション情報 肝臓学会・消化器病学会特別企画1(肝臓学会・消化器病学会合同)

腹腔鏡・肝生検の現状と再評価-次世代への継承とその問題点

タイトル 肝_肝消企1-12:

当院における腹腔鏡検査・治療の現状

演者 渡邊 俊司(自治医大・消化器内科)
共同演者 大竹 俊哉(自治医大・消化器内科), 磯田 憲夫(自治医大・消化器内科)
抄録 【背景】当院では,腹腔鏡の黎明期から,その有用性に着目し,肝疾患の診断・治療のために活用してきた.また,消化器疾患に限らず,腹腔鏡検査が有用な病態が存在する.今回,腹腔鏡が有用であった症例を提示し,その役割について検討した.【当院の現状】腹腔鏡的肝癌治療:55症例/年,経皮肝生検:62症例/年,腹腔鏡下肝生検:2症例/年.【肝細胞癌に対する腹腔鏡治療】経皮ラジオ波焼灼療法が一般化しているが,肝表の病変や,他臓器に接する腫瘍については,腹腔鏡および腹腔鏡超音波による観察下の治療が有用である.また,画像診断にて確診がつかない症例においては治療直前に腹腔鏡超音波下に腫瘍生検を行うことにより,確診をつけることが可能である.【腹腔鏡検査が有用であった症例】(症例1)結核性腹膜炎:原因不明の難治性腹水の原因検索として腹腔鏡検査を施行した.特徴的な画像所見を認め,病理学的診断の下,適切な治療が可能であった.(症例2)悪性リンパ腫(バーキットリンパ腫):肝臓を含めた,腹腔内リンパ節の腫大を認め,診断確定のため経皮エコーガイド下肝生検を施行したが,検体採取が不可能であり,また経皮肝生検により腹腔内出血を呈したため,確実な肝組織採取のため,腹腔鏡的肝生検を施行した.これにより,十分量の検体採取に成功し,診断を確定,早急な治療開始に寄与した.(症例3)薬剤性肝障害:胆汁うっ滞型肝障害で肝不全を呈した患者の鑑別で腹腔鏡検査を行った.肝表面は平滑で胆汁うっ滞の所見を認め,原発性胆汁性肝硬変や原発性硬化性胆管炎は否定された.【まとめ】腹腔鏡による肝癌治療は,低侵襲,かつより安全・確実に施行が可能であり,有用性は高いと考えられた.腹腔鏡検査ではリスクの高い症例においても,肝生検時の止血が確実に行えること,十分な量の組織が採取出来ること,かつ,腹腔鏡観察が診断に寄与する点などから,症例を選んで腹腔鏡検査を行うことが推奨される.
索引用語 腹腔鏡, 肝生検