セッション情報 消化器外科学会特別企画(主題)1(消化器外科学会)

次世代消化器癌診療における外科治療の展望:Part I 消化管,Part II 肝胆膵

タイトル 外企1-2指:

次世代癌診療における胃外科の課題

演者 小寺 泰弘(名古屋大・消化器外科)
共同演者 宮原 良二(名古屋大大学院・消化器内科学), 藤原 道隆(名古屋大附属病院・クリニカルシミュレーションセンター)
抄録 次世代の胃外科においては高齢化(併存症を有する症例の増加)と接合部癌の増加がキーワードとなるであろう.早期胃癌については,センチネル法によりリンパ流を介した進展範囲を特定し,術式の個別化につなげたい.しかし,適切な距離を確保して病変を局所切除するのもストレスの多い術式である.古典的な形態学に頼った切除範囲の決定は鏡視下手術には適さないので,病変の浸潤範囲についても精緻なnavigation法の開発が望まれる.これらの結果として安全に縮小手術を選択できればよい.切除可能な進行癌の治療に際しては,ERASの観点からは低侵襲手術と最適な周術期栄養により入院期間の短縮のみならず高い免疫能の維持を実現したい.加えて,優れた画像システムと操作性の良いロボットによる精緻な手術を行い,適切な時期に有効な補助療法を行うことが理想である.こうした補助療法の適応はminimal residual diseaseの存在予測,薬剤感受性,癌の悪性度などの観点から個別化できることが望ましい.鏡視下手術は癌の術中散布を防ぎ,合併症を最小限に抑えられるという条件のもとで適用されるものであり,これを支援するためには手術のトレーニングの充実とともに,roboticsをはじめ,可能な限りのtechnologyの導入が求められる.よりよい治療で再発を抑えることが究極の医療費削減策と考えたい.下部食道切除を伴う全摘が増えることから,逆流防止や経口摂取量・消化吸収能の低下への対策についてもbreakthroughが必要である.胃切除術後の機能障害については,時に再建法による差以上に個人差を強く感じるところであるが,この方面での研究は大きく進んではいない.消化管運動機能,消化吸収機能等各種能力にも個体差があると思われ,これを的確に測定できる指標が求められる.胃外科の領域での課題はまだ多く,より体に優しい方法で根治性を高め,術後障害を最小限とするための研究と努力が継続されることになろう.
索引用語 胃癌, 手術療法