抄録 |
胆道外科,特に胆道癌の外科治療は,過去20年の間に大きく進歩した.その内容は,1)術前画像診断の進歩,2)手術手技の進歩と安全性の向上,3)術後長期予後の改善,にまとめることができる.1)術前画像診断の進歩はMDCTの出現によるところが大きい.とりわけ肝門部や膵頭周囲の主要脈管の描出とその立体解剖の把握,癌の三次元進展度診断とそれに基づくR0切除を企図した術式の設定は,MDCTによって飛躍的に容易かつ正確に行われるになった.2)手術手技に関しては,胆道癌に対する広範肝切除や膵頭十二指腸切除の安全性が向上した.とりわけ,肝門部胆管癌に対する肝切除の2000年以前の在院死亡率は8%前後であったものが,術後肝不全の克服によって,現在ではhigh volume centerにおいては1~2%程度にまで改善している.さらに肝動脈合併切除・再建や肝切除を伴う膵頭十二指腸切除(HPD)などの侵襲の高度な手術も比較的安全に,かつ安定して行われるようになってきた.3)術後長期予後の改善は,特に肝門部胆管癌においてみられる.2000年以前には20~30%台であった5年生存率は,肝動脈合併切除やHPDにみられるような手術適応の拡大にもかかわらず,現在では40%台にまで向上している.次世代においては,術前画像とシミュレーション技術のさらなる革新,手術手技とその安全性の一層の向上,そして最終的には術後長期予後の改善を図っていくことが期待される.この中で,手術手技に関しては,腹腔鏡手術およびロボット手術の進歩が胆道癌の外科治療を変化させていくことが当然推測される.腹腔鏡手術が根治性と安全性を損なわずにどこまで胆道癌手術にとりいれられるようになるか,その中でロボット手術がどの程度の役割を果たすのか,技術を開発しそれらの役割を明らかにすることは次世代に課された課題の一つと言えよう.術後長期予後の改善には,有効な補助療法の開発が欠かせない.現時点では,前向き試験で有効性が証明された補助療法は未だないが,近未来においては,わが国から補助療法のエビデンスを発信することが強く期待されている. |