抄録 |
【目的】当市医師会の胃がん検診(個別検診)では,'92年から全画像を医師会に集め,2次あるいは3次読影を行うセンター方式を導入している.これまで我々は本方式を当市医師会方式として,偽陽性率や偽陰性率の改善に有用であることを報告してきた.'08年よりX線検診に加え,内視鏡検診を導入しているが,精度管理のために,検診票に胃粘膜萎縮度判定を含む各種評価項目を設定している.今回,その有用性について検討した.【方法】'08から'12年度の5年度にわたる受診者(のべ52540例)を対象とした.1次検診機関にて撮影した画像(撮影法は要項で規定)は所見を記入した検診票とともに電子媒体にて医師会に提出され,2人ペア(内視鏡専門医を少なくとも1人を含む)の読影医が2次読影を行うとともに,画像を5段階(大変良い,良い,一層努力,悪い,再検査)で評価,さらに胃粘膜萎縮度を7段階(萎縮なしからO-3まで)で判定した.また,1次あるいは2次読影での有所見例は,3次読影(2人の内視鏡指導医)にて最終判定を行うとともに,1次での生検例に関しては,その妥当性を評価した.さらに,複数年度受診者を対象に,初回検診での萎縮度とその後の発癌について,Kaplan-Meier法にて比較した.【成績】画像評価では,良い以上の評価が初年度77.2%,5年目91.0%と増加した.また,生検率は初年度11.8%, 5年目7.0%と低下し,妥当な生検率はそれぞれ44.4%, 74.9%と改善した.また萎縮度別の発癌に関する検討では,対象12027例のうち(観察期間, 894±405日),萎縮なしとC1をまとめた群(4553例)からの発癌は3例,C2からO3をまとめた群(7474例)からの発癌は41例で,有意差を認めた(Logrank検定, p<0.0001).【結論】検診票に設けた各種評価項目が,検診の質の向上に有益であると推察された.また,萎縮度とその後の発癌の間に関連性が認められたことから,リスク評価ができる検診につながる可能性が示唆された.ピロリ菌感染の有無,除菌歴等の情報を加味することで,より精密なリスク評価が可能か否か,今後の検討が必要である. |