セッション情報 消化器がん検診学会特別企画(主題)2(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

胃がん検診におけるH. pyloriと胃粘膜萎縮によるリスク集約-エビデンスの要約と今後の研究課題-

タイトル 検_検企2-1指:

胃がんリスクを考慮した胃がん検診体制の構築と課題

演者 吉原 正治(広島大保健管理センター)
共同演者 伊藤 公訓(広島大病院・消化器・代謝内科), 日山 亨(広島大保健管理センター)
抄録 H. pylori(Hp)感染が胃がんの発生に強く関わることはよく知られ,その一方で若年者ほどHp感染率は確実に減少している.胃がん高危険群であるHp感染と胃粘膜萎縮の状態を,安全・簡便に絞り込む方法として,血液中のHp抗体とpepsinogen(PG)値を測定する方法が代表的なものである.リスク評価を応用した胃がんの検診体制の構築のために検証すべきことには,リスク評価方法自体について,リスクに応じた形態学的検査(X線・内視鏡検査などの組合せ,間隔)について,全体の検診体制システムについて,などがあり,本学会の附置研究会「胃がんリスク評価に関する研究会」においても検討を進めている.胃がんリスク評価の理論ベースにはHp未感染者は極めて胃がん発症が少ないということがある.我々の検討でも,全胃がんに対するHp陰性がんの頻度は21/3161(0.66%)で,内視鏡治療例に限定すると,その頻度は0.79%であり,Hp未感染者の胃がんの頻度は極めて低率であった.Hp抗体とPGによる胃がんリスク評価では,Hp抗体陰性かつPG陰性を「A群」とし,胃がんリスクの低い群と判断するが,リスク評価方法自体の課題として,「A群」におけるHp既感染例の混在がある.Hp抗体は感度が100%でなく,PG法も偽陰性があることから,A群にはHp既感染例も含まれうる.我々の検討では,広島大学病院における早期胃がん内視鏡治療例887症例においてHp抗体・PG法判定のみでみると,A群に含まれる例が148症例(16.7%)であった.このA群148例のうち,真のHp陰性例は7例のみであった.このように血液検査判定上のA群からのHp未感染症例とHp既感染例(自然除菌と思われる状態)の抽出方法には,十分な問診,カットオフ値の検討,リスク分類方法の再検討などが必要である.また,胃炎におけるHp除菌療法も保険収載され,今後除菌例は益々増加してくると推測され,Hp除菌後のリスク評価の判定,管理方法もあわせ検討する必要がある.我々のこれまでの検討を含め,課題と検証事項について報告する.
索引用語 胃がん検診, H. pylori