セッション情報 消化器がん検診学会特別企画(主題)2(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

胃がん検診におけるH. pyloriと胃粘膜萎縮によるリスク集約-エビデンスの要約と今後の研究課題-

タイトル 検_検企2-2:

胃がんリスク診断を正しく理解し,対策型検診へ導入すべきである

演者 井上 和彦(川崎医大・総合臨床医学)
共同演者 近藤 秀則(近藤病院(岡山))
抄録 H.pylori(Hp)感染および,それに伴う胃粘膜の炎症と萎縮が胃がん発生に大きく関与していることが明らかになっており,胃がん検診へも応用すべきであろう.血清Hp抗体とペプシノゲン(PG)法に組み合わせのABC分類について,同日の内視鏡を基準とした検討では各群での胃がんの発見率はC群で1.87%(39/2089),B群で0.21%(7/3395),A群で0%(0/2802)であり,各群間で有意差を認めた.さらに,ABC分類を行った翌年度以降11年間の検討でもC群>B群>A群の胃がん発見率であり,A群では1例もなかった.ABC分類を対策型検診に導入する場合,Hp感染持続例・既感染例のA群への混入防止が重要である.人間ドック内視鏡受診者2521例(Hp未感染948例,Hp感染1573例)についてHp感染診断に関してROC解析を行うとPG1,PG2,1/2比のAUCはそれぞれ0.616,0.942,0,958であり,PG2のカットオフ値を11.4ng/mlとすると感度88.3%,特異度87.0%,1/2比のカットオフ値を4.4とすると感度89.0%,特異度89.9%と良好であった.この結果から,A群へHp既感染者の混入を防ぐために,Hp除菌既往の問診とともに,PG2>11.4ng/ml,あるいは,1/2比<4.4では,A群でも画像検査による確認が必要と考える.また,ABC分類だけでは胃がん検診は成立せず,適切な画像検査との組み合わせが必須であり,複数年度にわたる管理体制も重要である.演者らは,医師会と行政が綿密に連携しABC分類を基盤とした地域胃がん検診システムを構築している.すなわち,一次検査としてABC分類を行い,C群とB-2群(PG2≧30ng/ml)は逐年内視鏡,B-1群(PG2<30ng/ml)は直接胃X線,A群は原則画像検査なしとしている.そして,一次検査(ABC分類),二次検査(画像検査)ともに中央管理するとともに「胃の健康度」手帳を作成し,個人管理に用いている.我が国におけるHp感染率は速いスピードで低下しており,胃がんリスク診断のメリット・デメリットを正しく理解し運用することにより,今から約30年間対策型検診に貢献できると期待している.
索引用語 ABC分類, Helicobacter pylori