セッション情報 消化器がん検診学会特別企画(主題)2(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

胃がん検診におけるH. pyloriと胃粘膜萎縮によるリスク集約-エビデンスの要約と今後の研究課題-

タイトル 検_検企2-4:

山形市一般住民検診におけるABC分類-A群の検討も含めて-

演者 吉澤 和哉(山形大附属病院・2内科)
共同演者 大泉 晴史(山形市医師会健診センターDELIMITER大泉胃腸科内科クリニック), 深尾 彰(山形大大学院・公衆衛生学)
抄録 【目的】[1]ABC分類の有用性が報告されており,山形市での一般住民検診で行ったABC分類について検討した.[2]H.pylori(Hp)既往感染者のA群への誤分類の増加が危惧されており,A群の胃X線所見とHp抗体・ペプシノゲン(PG)について検討した.
【方法】[1]2010年6月から2011年12月に胃X線検診を行った連続3758名(39-74歳,平均62.5歳,男性1610名)にABC分類を行った.HpまたはPG陽性者及び胃X線検診での要精査群に対し内視鏡検査を勧奨した.[2]A群の胃X線検査の胃小区の形態(平滑,多角形・顆粒状の2つに分類)と胃体部皺襞の分布範囲(背臥位正面像で胃体部を4分割し皺襞が存在する領域数を0~2,3~4に分類)を読影し,平滑な胃小区かつ皺襞分布が3~4領域である場合を真A群,多角形・顆粒状胃小区かつ皺襞分布が0~2領域である場合を偽A群と定義した.
【結果】[1]A群1598名(42.5%),B群649名(17.3%),C群1200名(31.9%),D群311名(8.3%)であった.B群4例(0.6%),C群13例(1.1%),D群3例(1.0%)の計20例(B,C,D群の0.9%)の胃癌が発見された.[2]真A群は914例(57.2%),偽A群は396例(24.8%),それ以外の288例(18.0%)は除外した.Hp抗体価は偽A群(平均4.5U/ml)が真A群(平均3.1U/ml)より有意に高かった.PGI値は真A群(平均51.1ng/ml),偽A群(平均51.1ng/ml)と差はなく,PGII値は偽A群(平均12.9ng/ml)が真A群(平均11.2ng/ml)より高く,PGI/II比は真A群(平均4.6)が偽A群(平均4.2)より高かった.Hp抗体価でROC解析を行うとAUC=0.77で,測定感度以下を真A群,3U/ml以上を偽A群とすると感度87.4%,特異度63.4%と最も良好であった.
【結語】ABC分類で比較的多くの胃癌を発見した.またA群でもX線像からは萎縮性胃炎が疑われる例が比較的高頻度に存在するため,一度は画像検査を行うべきと考えられた.さらにA群の中で血清マーカーを新たに設定し直すことで偽A群を識別できる可能性が示唆された.Hp除菌の問診を加味した結果も併せて報告する.
索引用語 胃X線検診, ABC分類