セッション情報 消化器がん検診学会特別企画(主題)2(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

胃がん検診におけるH. pyloriと胃粘膜萎縮によるリスク集約-エビデンスの要約と今後の研究課題-

タイトル 消_検企2-5:

ABC検診のA群における内視鏡的萎縮胃粘膜の検討から見えてくるもの

演者 後藤田 卓志(東京医大・消化器内科)
共同演者 石川 秀樹(京都府立医大・分子標的癌予防医学), 森安 史典(東京医大・消化器内科)
抄録 【背景】ABC検診は胃癌リスクを考慮した検診システムであり,胃癌の超低危険度群とされるA群はピロリ菌非感染非萎縮胃粘膜であり胃癌検診は不要と考えられている.一方,偽陰性を考慮して血清学的にA群に分類されても一度は内視鏡的に萎縮程度を観察することが勧められている.【目的】ABC検診にて血清学的にA群分類された症例における萎縮の有無と程度を内視鏡的に検討する.【方法】ピロリ菌除菌歴のない検診受診者の前向き登録試験にて血清学的にA群に分類されプロトコールに従い初回上部消化管内視鏡検査(EGD)を受けた198例(男79,平均年齢59.2歳)を対象とした.研究参加の同意取得後,同日に採血とEGDを施行し,胃粘膜萎縮を木村・竹本分類にしたがって評価した.なお,ピロリ菌抗体価(Eプレート)は10U/ml以上を陽性としたが,抗体価が5U/ml未満の頻度とPGIおよびPGII実測値についても検討した.【成績】EGDにて萎縮なしと診断された症例は91例(46%)であった.軽度萎縮(C1/C2)が49例(25%),中等度萎縮(C3/O1)が36例(18%),高度萎縮(O2/O3)が22例(11%)であった.ピロリ菌抗体価5U/ml未満の頻度は,萎縮なしでは7例(8%),軽度・中等度・高度萎縮症例ではそれぞれ7例(14%),7例(19%),4例(18%)であった.PGIおよびPGII実測値は,萎縮なし;49.6ng/mlと10.4ng/ml,軽度;57.0ng/mlと10.6ng/ml,中等度;42.8ng/mlと9.7ng/ml,高度;36.7ng/mlと9.2ng/mlであった.【結論】血清学的A群において約3割に内視鏡的中等度・高度萎縮を認めたことから,A群においてもEGDにて萎縮判定を行うことは偽陰性の拾い上げとして意味がある.しかし,マンパワーからは“一度は内視鏡”は困難である.本格的にABC検診を導入する場合には血清検査のカットオフ値などの再検討や血清検査の逐年検査などの検討が必要である.(UMIN試験ID:UMIN000005962)
索引用語 ABC検診, Helicobacter pylori