セッション情報 消化器がん検診学会特別企画(主題)2(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

胃がん検診におけるH. pyloriと胃粘膜萎縮によるリスク集約-エビデンスの要約と今後の研究課題-

タイトル 内_検企2-8指:

胃がんリスク評価の有効性と精度管理の課題

演者 加藤 勝章(宮城県対がん協会がん検診センター)
共同演者 千葉 隆士(宮城県対がん協会がん検診センター), 渋谷 大助(宮城県対がん協会がん検診センター)
抄録 血清Helicobacter pylori(Hp)抗体とペプシノゲン(PG)法を組み合わせて胃がん罹患リスクを評価するABC分類では,A群<B群<C(+D)群の順で採血時点およびその後の胃がん発見頻度が高くなるとされている.その目的は,低リスクであるA群を対策型検診から外す,もしくは検診間隔を延長する,さらに,高リスクであるB・C群はリスクに応じて検査方法や検診間隔を設定することで胃がん検診の効率化を図ろうとするものである.すなわちABC分類とは血液検査による検診対象集約の手段であって,現行の間接胃X線検診のような胃がんの罹患が疑われるヒトをふるいにかけるスクリーニングとは意味が違う.従って,血液検査だけで精密検査該当とするのは検診のあり方としては誤りと言える.ABC分類に関する報告の多くはがん罹患をエンドポイントとしたコホート研究であり,ABC分類に基づいた対象集約型検診としての死亡率減少効果に関するエビデンスは乏しい.また,現行の血清Hp抗体のカットオフ値やPG法の基準値では除菌例や他のリスク群からの偽A群の混入が避けられずA群=Hp未感染とはいえない.A群と判定された場合,低リスクという安心感はあるにしても,検診を受けられない住民の不公平感に対しては行政から納得のいく説明が必要である.さらに,B・C群については,検診間隔や方法の設定の根拠となる明瞭なデータは無い.また,血液検査機関と画像検査機関が異なる場合の個人データの管理については,自治体が管理するのか,検診機関が管理するのか,その際の個人情報保護の問題や精度管理に関する行政のチェック体制については何ら指針が定まっていない.とはいえ,若年者を中心としたHp未感染者が急増し,Hp感染胃炎に対する除菌療法の保険適用も開始となった現状にあって,胃がんリスク評価に基づく対策型検診は合理的な胃がん対策となる可能性は高い.対象住民が納得できるよう科学的根拠に基づいた有効性の証明,実施手順や管理体制のあり方を早急に検討する必要がある.
索引用語 胃がん検診, リスク評価