抄録 |
【目的】急性膵炎、慢性膵炎ともアルコール性の占める割合が最も高く主要な成因である。近年、若い世代を中心とした女性飲酒者の増加が指摘されているが、全国調査でも女性患者におけるアルコール性急性および慢性膵炎の割合は上昇傾向にある。これまで女性の飲酒量と膵炎の危険性について詳細な検討はなされていない。本研究は膵炎と飲酒量の関連を性別に比較検討し、その性差を明らかにすることを目的とする。【方法】全国の日本消化器病学会認定ならびに関連施設に調査票を送付し、2005年より2010年までの間に入院した急性膵炎と慢性膵炎患者を対象とした症例対照研究を実施した。対照は同じ病院を受診した患者から性、年齢(±5歳)、初診時年月日(±1年)を合わせて無作為に抽出した。統計解析はロジスティック回帰分析によって検討した。なお本研究は東北大学医学部倫理委員会の承認のもと行った。【成績】症例は急性膵炎574例、慢性膵炎402例の計974例であり、対照群計1001例と比較検討した。急性膵炎の場合、男性ではエタノール換算で1日平均40-59g, 60-79g, 80g<を飲酒した者のオッズ比(95%信頼区間)は非飲酒者に比べ、それぞれ1.9(1.1-3.2), 2.1(1.2-3.5), 4.0(2.6-6.2)であった。女性ではそれぞれ5.4(0.6-46.4), 8.6(1.1-69.4), 7.5(1.7-33.6)といずれも男性より高い危険率であった。慢性膵炎の場合、男性では同量の飲酒した者のオッズ比はそれぞれ2.6(1.4-4.9), 9.0(4.9-16.8), 15.6(9.0-26.9)であった。女性ではそれぞれ11.7(1.4-98.4), 11.7(1.4-98.4), 23.3(3.0-184.4)といずれも男性より高い危険率であった。【結論】女性における膵炎リスクは男性と比べ、同じ飲酒量でも危険率が高かった。今後、女性の飲酒量の増加に伴い膵炎の発症率が高くなる可能性が考えられる。 |