セッション情報 シンポジウム1(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎ウイルス再活性化の予防・治療の現状と課題

タイトル 肝S1-5:

造血幹細胞移植後のHBV再活性化症例における宿主免疫応答の解析

演者 木村 公則(がん・感染症センター都立駒込病院・肝臓内科)
共同演者 林 星舟(がん・感染症センター都立駒込病院・肝臓内科), 坂巻 壽(がん・感染症センター都立駒込病院・血液内科)
抄録 【目的】B型肝炎ウイルス(HBV)の既往感染例に対して化学療法や免疫抑制剤投与後にHBVの再活性化を生じることが問題となっているが,高リスク群の一つとして造血幹細胞移植後があげられる.今回我々は,当院における最近6年間の造血幹細胞移植例463例のHBV再活性化率およびHBV再活性化症例5例の臨床経過,HBVに対する免疫応答解析を報告する.【方法】最近6年間で当院血液内科にて造血幹細胞移植を実施した463例(同種:376例,自家:87例)について,HBVキャリア,既往感染率および再活性化率を検討した.5例の再活性化症例発症時に末梢血リンパ球を採取し,急性B型肝炎例(5例),慢性B型肝炎急性増悪例(6例)の各群と比較し,1)CD8陽性HBV tetramer数,peptideに対するIFNg, TNFa産生数2)CD4陽性Foxp3陽性細胞3)CD14, CD16陽性TNFa産生数を解析した.また各群の血清を用いてサイトカイン,ケモカインの測定を行った.【成績】同種移植376例においてHBs抗原陽性例7例(2.1%)既往感染例119例(31.6%)で再活性化例が5例(4.2%)であった.また自家移植87例においては,HBs抗原陽性例1例(1.1%)既往感染例15例(17.2%)で再活性化例はみられなかった.再活性化症例は5例(男:女;3:2)でgenotype B:2例,C:3例であった.全例でcore/pre core promotorの変異はみられなかった.再活性化症例は全例にentecavirを投与し肝障害は低下した.CD8陽性抗原特異的T細胞数は急性肝炎例で増加し,CD4陽性Foxp陽性細胞数は低下していた.一方,再活性化症例ではCD14陽性TNFa産生数が増加しており,病態に関与していることが示唆された.【結論】造血幹細胞移植後のHBV再活性化率は同種移植例で高率であり今後再活性化症例の予測が重要な課題と考えられた.
索引用語 HBV再活性化, 免疫