セッション情報 シンポジウム1(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎ウイルス再活性化の予防・治療の現状と課題

タイトル 肝S1-6:

わが国におけるDe novo B型急性肝不全の実態と免疫抑制療法実施例におけるガイドラインの見直し

演者 中尾 将光(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科)
共同演者 中山 伸朗(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科), 持田 智(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科)
抄録 【目的】厚労省研究班は2009年にHBV再活性化の予防ガイドラインを発表した.一方,急性肝不全の年次調査では,2011年以降もHBV再活性化による劇症肝炎症例が登録されている.また,前向き研究でガイドラインの有用性を検証しているが,治療期間が長期に亘る免疫抑制療法に関しては,その見直しが求められている.これら研究班の成績を基に,わが国におけるHBV再活性化による急性肝不全の実態と,これを予防する際のガイドラインの問題点を発表する.【方法と成績】(1)De novo B型急性肝不全の実態:平成23および24年度の全国調査には2010~11年に発症した急性肝不全491例,遅発性肝不全(LOHF)17例の計508例が登録された.このうち121例(24%)がB型で,急性感染71例(59%),キャリア44例(36%),判定不能6例(5%)に分類された.キャリア例のうち14例(32%)は既往感染の再活性化例で,全例が内科的治療のみで死亡した.誘因はリツキシマブを含む化学療法が9例,その他の免疫抑制・化学療法が5例であった.(2)リツキシマブ以外の治療のよるHBV再活性化:対象は2009年4月~2012年3月に登録された既往感染289例(血液121,リウマチ・膠原病122,腫瘍35,腎臓11)でリツキシマブ以外の免疫抑制・化学療法を実施し,ガイドラインに準拠して2013年2月まで経過を観察した.経過観察期間は11~45ヶ月,再活性化は18例(4.8%),血清HBV-DNA量が2.1 Log copy/mL以上に上昇してentecavirを投与した症例は8例(2.8%)であった.なお,リウマチ・膠原病および腎臓領域では,治療開始6か月以降は再活性化が見られていない.【考案と結語】2011年もHBV再活性化による急性肝不全が発生しており,全例が致死的経過を辿ったが何れもガイドラインを遵守していなかった症例である.一方,免疫抑制療法の実施例では,治療開始6か月以降はモニタリング間隔を延長できる可能性がある.ガイドラインを医療経済的に合理的なものに改編し,その遵守をより徹底する必要があると考えられた.
索引用語 HBV再活性化, De novo B型肝炎