セッション情報 シンポジウム1(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎ウイルス再活性化の予防・治療の現状と課題

タイトル 肝S1-7:

前向き登録例の長期経過からみたHBV再活性化対策の現状

演者 田守 昭博(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学)
共同演者 榎本 大(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学), 河田 則文(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学)
抄録 【目的】HBV再活性化に対するガイドラインが,多領域の診療に導入され重篤な肝障害を阻止することが検証されつつある.その現状を評価するため今回,当施設にて登録・観察中の症例についてHBV再活性化の頻度・HBV関連マーカーの推移を解析した.【対象と方法】2007年から前向きにHBV DNAモニタリングを実施している203例 (HBs抗原陽性37例,HBs抗原陰性・HBc抗体陽性あるいはHBs抗体陽性166例)である.対象疾患は関節リウマチ(RA)98例,悪性リンパ腫(ML)30例,造血幹細胞移植(HSCT)20例,腎移植12例,膠原病疾患17例,リツキシマブ以外の化学療法26例である.ML, HSCT, 腎移植例では毎月,その他疾患では2-3ヶ月毎にHBV DNAを測定し,随時HBV血清マーカーを追加した.【結果】観察期間中央値22ヶ月(2-61ヶ月)においてHBs抗原陰性例からのHBV再活性化はRA症例2/85 (2%),ML症例 3/26 (12%),HSCT症例 4/19 (21%)であった.再活性化例の登録時HBs抗体価は陰性2例,50未満6例,100以上1例であり,再活性化時には1例を除きHBs抗体は陰性であった.再活性化までの期間はHSCT実施2例にて1年以上,他の治療例では1年未満であった.再活性化例を除く118例におけるHBV血清マーカーの推移は,HBs抗体陰転化は3例(ML, RA, 尋常性天疱瘡),この3 例を含めてHBc抗体陰転化は8例(追加RA4例, HSCT1例)であった.いずれの症例も輸血等による抗体輸注ではなかった.モニタリング例では,HBs抗原の有無に関わらずHBV DNAが定量された時点でエンテカビルを投与し,重篤な肝障害は阻止できた.なおHBs抗原陰性RA患者2例にて観察中に肝内腫瘤を検出した.1例は生検にて悪性リンパ腫と診断しR-CHOPを開始.もう一例は多血腫瘍で切除予定である.【結語】HBs抗原陰性RA,ML症例では1年未満に再活性化が発生した.一方,HSCT例では移植後1年半以降にもHBV再活性化が発生した.再活性化していない症例にても登録時のHBs抗体やHBc抗体の陰転化を認めた.長期観察例には,画像検査を実施する必要が示唆された.
索引用語 HBV再活性化, 血清マーカー