セッション情報 シンポジウム1(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎ウイルス再活性化の予防・治療の現状と課題

タイトル 肝S1-9:

固形腫瘍治療時におけるde novo B型肝炎の再活性化

演者 杉本 理恵(国立九州がんセンター・消化器内科)
共同演者 田尻 博敬(国立九州がんセンター・消化器内科), 荒武 良総(国立九州がんセンター・消化器内科)
抄録 固形がん治療におけるde novo B型肝炎の再活性化(目的) 固形がんの加療中におこるde novo B型肝炎の再活性化については不明である.今回,HBsAg-/HBcAb+の固形がん患者のHBVDNAをフォローアップし,de novo B型肝炎再活性化の有無を前向きに検討した.又過去にde novo 劇症肝炎を起こした症例との比較検討も行った(対象)固形がん加療前にHBcAbが陽性で,HBVDNAを3ヶ月以上フォローアップしえたHBsAg陰性患者79例(方法)がん加療中にHBVDNAが陽転化したものを出現群,しなかったものを非出現群とし,2群間で,治療前のsAb,eAb,がんの治療内容,治療後の経過を比較し,HBVDNAの出現が予測できるかどうか検討した(成績)フォローアップ期間は,中央値が170日(30~2602)で,5例にHBVDNAが出現した.(出現率6.3%)治療開始からDNA出現までは33日(21~707).出現群のがん治療は,手術,ラジオ波,肝動注療法,全身化学療法,無,各1例で,非出現群と比し差は認めなかった.HBcAb中央値,HBsAb陽性率,HBeAb陽性率は,出現群/非出現群でそれぞれ,12.3/9.9,60%/60%,60%/52%といずれも有意差を認めなかった.出現群のうち,4例はエンテカビルの投与でDNAは陰性化し,1例はエンテカビルが投与されないまま2ヶ月後にHBVDNA消失し,化学療法を継続するも231日目の現在までHBVDNAは消失している.過去に固形がん化学療法後de novo 劇症肝炎死亡例がある.加療8ヶ月目にHBsAg陽転化したがエンテカビルを投与せず1年9ヶ月目に劇症肝炎が発症したが,が,化学療法単独での劇症化は生じておらず,抗リウマチ薬が原因になったと考えられる.(考察)固形がんの治療中にHBc抗体陽性者から6.3%の頻度で,HBVDNAが出現した.出現を予測する因子の同定は困難であった.抗ウィルス剤を投与せずに,加療を継続してもHBVDNAが自然消失した症例があり,劇症化例でも化学療法単独では劇症化を来さなかったことを考えると,ガイドラインの妥当性についても今後更に症例の蓄積が重要と考える.
索引用語 de novo肝炎, 固形腫瘍