セッション情報 シンポジウム1(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎ウイルス再活性化の予防・治療の現状と課題

タイトル 肝S1-10:

固形腫瘍および造血器腫瘍におけるB型肝炎再活性化対策の当院の現状

演者 中村 とき子(国立北海道がんセンター・消化器内科)
共同演者 佐藤 康裕(国立北海道がんセンター・消化器内科), 高橋 康雄(国立北海道がんセンター・消化器内科)
抄録 【目的】化学療法によるHBV再活性化が問題となっているが,固形腫瘍を含めた報告は少ない. 化学療法導入前のHBV関連抗原抗体のpre screening,HBV-DNAのmonitoring ,核酸アナログの予防投与の有無などB型肝炎再活性化対策の当院の現状を固形腫瘍を含め報告する.【方法】2009年4月から2012年6月まで当院で化学療法を施行した固形腫瘍2325例(乳腺外科568,婦人科472,消化器内科457,呼吸器内科378, 泌尿器科140 ,頭頸部外科86,放射線治療科76, 腫瘍整形外科70,消化器外科48,呼吸器外科25,皮膚科5 )と造血器腫瘍415例の計2740例を対象とし,後ろ向きに検討した.【結果】1. HBs抗原陽性4.2 %(115/2740),HBs抗原陰性88.6 %(2429/2740),不明7.2%(196/2740). 2.HBs抗原陽性115例(固形腫瘍95, 造血器腫瘍20)中,HBV-DNA定量測定施行は固形腫瘍で50.5%(48/95),造血器腫瘍で100%(20/20),であった.核酸アナログの予防投与は造血器腫瘍の19/20例で施行され,固形腫瘍では29/95例(HCC7例含む)であった. 3.HBs抗原陰性ではHBc抗体HBs抗体未測定78.6% (1910/2429),HBc抗体陽性and/or HBs抗体陽性は210/519(固形腫瘍84,造血器腫瘍126),そのうちHBV-DNA定量測定は固形腫瘍23.8%(20/84)造血器腫瘍48.4%(61/126)で施行された.核酸アナログは固形腫瘍では1例,造血器腫瘍では5例で投与された.4. HBs抗原陽性の固形腫瘍の1例において(膀胱腫瘍,GEM+CDDP3コース終了後)HBV-DNA検出感度以下から陽性化し核酸アナログの投与を開始した.5. HBs抗原陰性HBs抗体陽性の造血器腫瘍2例(ともに非ホジキンリンパ腫(Rituximab/造血幹細胞移植施行/PSL+CyA投与))でHBV-DNAが陽性化し核酸アナログ投与を開始した.いずれも核酸アナログの投与にて肝炎の発症はなかった.【結論】固形腫瘍においては,HBs抗原陽性,HBV-DNA感度以下症例でHBV-DNAの陽性化した1例を認めた. HBc抗体陽性and/or HBs抗体陽性からのHBV-DNAの陽性化は認めなかった.
索引用語 HBV再活性化, 化学療法