セッション情報 シンポジウム1(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎ウイルス再活性化の予防・治療の現状と課題

タイトル 消S1-11追:

当院における化学療法施行例,免疫抑制療法施行例及び固形腫瘍に対する手術施行例におけるHBV再活性化について

演者 盛田 篤広(京都第二赤十字病院・消化器内科)
共同演者 宇野 耕治(京都第二赤十字病院・消化器内科), 白川 敦史(京都第二赤十字病院・消化器内科)
抄録 【目的】当院における血液・消化器悪性腫瘍への化学療法施行例,リウマチ性疾患(RA)・炎症性腸疾患での免疫抑制療法施行例・生物学的製剤投与例及び固形腫瘍に対する手術施行例でのHBV再活性化の状況,HBV関連ウイルスマーカー測定の現状を明らかにする.【対象及び方法】対象は,1)1999年1月から2013年3月迄に当院で治療を行った血液疾患1778例の内,化学療法を行った血液悪性腫瘍490例(悪性リンパ腫(ML)287例,白血病129例,MDS74例),2)05年1月から13年3月に加療した大腸癌714例,胃癌1265例,膵臓癌302例,3)11年12月から13年3月迄に加療したRA 107例,4)06年1月から12年11月迄に加療した炎症性腸疾患115例(潰瘍性大腸炎73例,クローン病42例) 及び5)11年12月から12年11月迄に手術が行われた固形腫瘍283例(大腸癌55例,胃癌54例,肺癌27例等)である.これらの症例についてHBV関連マーカーの測定状況,経過中の再活性化の有無の検討を行った.【結果】1)MLの127例でRituximab(R)併用化学療法が行われていた.HBsAg陽性は3例で1例は劇症化を認めていた.既感染からの再活性化は認められなかった.R併用例でHBsAb, HBcAbの測定率は2008年までが10%,2009年以降で64.6%であった.2)消化器悪性腫瘍の内,HBsAg陽性は1例で,再活性化例はなかった.3)RA 107症例の内,既感染は15例で,再活性化は1例に認められた.4)炎症性腸疾患の投薬内容は,ステロイドが39例,免疫抑制剤が11例,生物学的製剤が25例であり,HBsAg陽性の1例でETVが投与されていた.再活性化はないが,HBsAg陰性例ではHBsAb, HBcAbの測定もなかった.5)手術例の内,HBsAg陽性は2例 (脳腫瘍,肝細胞癌)で,再活性化は認めなかった.【考察と結語】血液疾患,RAでのHBV対策は適切に行われていた.消化器悪性腫瘍や炎症性腸疾患,固形腫瘍に対する手術でのHBV再活性化は認められていないが,ガイドラインに基づいた正しいHBV関連マーカー測定の啓蒙が必要と思われた.
索引用語 HBV再活性化, 化学療法