セッション情報 |
シンポジウム2(消化器病学会・消化吸収学会合同)
IBDに対する内科的治療とその限界
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タイトル |
消S2-3:クローン病に対する抗TNFα抗体製剤治療による予後改善と課題
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演者 |
鎌田 紀子(大阪市立大・消化器内科) |
共同演者 |
宮嵜 孝子(大阪市立大・消化器内科), 渡辺 憲治(大阪市立大・消化器内科) |
抄録 |
【目的】当科のAdalimumab(ADA)とInfliximab(IFX)投与クローン病(CD)症例から,両製剤の有効性とその指標および限界について検討した.【方法】2013年3月末までのADA投与106例とIFX倍量(10mg/kg)投与35例について,臨床的及び内視鏡的有効性,治療戦略を検討した.有効性はHarvey-Bradshaw Index(HBI:寛解4以下),CRPで評価し,内視鏡的評価はSimple endoscopic score for Crohn's disease(SES-CD)を用い5未満を粘膜治癒(MH)と定義した.【成績】ADA投与106例の投与28週後の検討では,バイオナイーブ例(N群,53.8%)がIFXからの移行例(SIA群,46.2%)に比べ,有意に寛解導入率が高く(p<0.05),内視鏡的有効性も高かった(p=0.0002).SIA群を,移行時に臨床的活動性の二次無効群と臨床的寛解だがIFX投与前後で内視鏡所見悪化を認めた為ADAに移行した群に分けると,前者は内視鏡的有効性がなくIFX倍量投与に移行したが,後者は内視鏡的有効性を示した(p=0.0004).MH関連因子を多変量解析すると,ADA投与前SES-CD低値が抽出され(p=0.018),その後の長期成績でもMH群は非MH群に比べ有意に累積再燃率が低値だった(p=0.0042).一方IFX倍量投与35例は,ADAから移行例11例(全例IFX二次無効でADA移行例)とIFX5mg/kg二次無効から移行例24例(IFX投与220例中)に大別され,後者のIFX開始から倍量移行までの期間は3.9±1.2年だった.IFX倍量投与前と28週後の検討で,HBI(3.57vs3.05)やCRP(1.26vs1.80)は改善を認めず,内視鏡的評価可能だった25例の検討でも,SES-CDの改善は8例(32%)に認めたのみで(p=0.37),免疫調整剤追加ないし増量(6例)や治験(4例)などの対応を要した.【結論】ADAはN群に有効で,IFX効果不十分例でも臨床的活動性に至る前に病勢悪化を内視鏡的に認識できれば,ADA移行後の成績は良好だった.粘膜治癒群は長期予後が有意に良好だった.一方,最終的にIFX倍量投与に至った例は抗TNFα抗体製剤の限界と思われる例が多く,今後IFXトラフ値の検討を追加する. |
索引用語 |
クローン病, 抗TNFα抗体製剤 |